東京高等裁判所 昭和26年(う)913号 判決
本件記録を精査すれば、原審証人円城寺徳次郞の原審公判廷における供述中には所論のような供述部分があり、これは所謂伝聞証言であることは所論のとおりである。しかし有罪判決には証拠の標目をかかげれば足りるので(尤も伝聞の部分或は採用しなかつた部分を除く旨を判示するのを相当とはするが)その内容のどの部分を採用したものであるかを詳細かかげる必要はないのである。故に原判決は証拠能力のない同証人の所論伝聞証言の部分はこれをすべて除いた他の証拠能力のある供述部分を証拠に採用したものと認めるのを相当とする。
而して同証人の原審公判廷における所論伝聞証言の部分を除いた他の部分である、篠崎富勇の養父小高義雄(被告人のこと)を呼んで調べると、小高は篠崎は自分の養子で昭和二四年七月七、八日頃小高宅で篠崎に〆粕一俵と米一俵との割合で米等でもと交換してくれと頼んだ事実があつたので共犯として送検した旨の供述部分(右供述部分は被告人の任意の供述で、しかも被告人に不利益な事実を承認するものであるから刑訴法第三二四条第一項、第三二二条により証拠能力がある。)にその他の原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判決認定の事実を十分認めることができる。又輸送の委託ということは特定の地域から特定の地域迄物を運搬することを委託するものであつて、一定の物の交換と、その輸送とは別箇の事実であることは所論のとおりであるが、被告人は本件〆粕と米等との交換を篠崎富勇に依頼した際、米等の輸送をも同人に依頼したものであることは原審が取り調べた証拠に現われた事実により推認することができる。そして本件交換の当事者である被告人と川島喜一が互にその氏名を知らなくても輸送の共謀の事実を認定する妨げとなることはない。その他原審が取り調べた証拠に現われた事実によつても右認定に誤があるものとは認められない。
原判決には訴訟手続違反も事実の誤認も認められない。
論旨はすべて理由がない。