東京高等裁判所 昭和26年(ツ)44号 判決
上告人 太田要
被上告人 山崎鎮吉
〔抄 録〕
上告理由第一点につき。
原判決によれば原審は上告人が昭和十九年一月頃本件係争家屋を被上告人に転貸するに当り、被上告人との間に上告人がその疎開先から東京都え戻つた時はその請求次第被上告人に於て何時でも右家屋を上告人に対して明渡すべき旨及び右家屋の内二階三坪については疎開未了の荷物の保管及び上告人が上京した場合の宿泊の場所とする為上告人に於て使用すべき旨の契約がなされたものと認定しているけれども、原審が結局右転貸借が上告人主張のように単に被上告人をして上告人の為いわゆる留守番をさせることのみを目的としてなされたものでないと認定したものであること原判文上推知するに難くないのであつて、原判決の挙示した各証拠によればこのような認定ができないものではない。而して前記の貸主たる上告人がその疎開先から東京え戻ると言うようなことは少くもその時期につき右契約当時に於ては当事者双方の到底予測し得ない事実と言うべきことは勿論であつて、このような事実の到来した時を以て前記家屋の貸借の終了の時期と約定しても右貸借を以て借家法第八条にいわゆる一時使用の為、なされたものということができないから原審が本件貸借は一時使用の賃貸借なりとする上告人の主張を採用しなかつたのは相当である。論旨は畢竟右に異る見解に立脚して原審の適正になした証拠の判断事実の認定を非難するものであつてその理由のないものである。