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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1233号 判決 1952年2月29日

控訴人 被告 穴水とみ

訴訟代理人 大橋弘利

被控訴人 原告 山形晴助

訴訟代理人 岡崎秀太郎

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の供述は、被控訴代理人において「被控訴人は芝園館組合の清算事務執行者として清算の必要上自己の名を以て訴訟行為を為すことを委託されたものである」と述べ、控訴代理人において「控訴人は出資の目的たる本件不動産を訴外穴水嘉三郎に譲渡したので、これが当然の結果として組合員たる地位は右訴外人に移転し控訴人は組合より脱退したものである。」と述べた外は原判決事実摘示と同一であり、又当事者双方の提出にかゝる証拠方法並びにその認否も原判決事実に記載するとおりであるから、ここに原判決の事実を引用する。

理由

当裁判所は左の点を附加する外、原判決と同一の理由により、被控訴人の本訴請求を正当として認容すべきものと判定したので、ここに原判決の理由を引用する。

控訴人は芝園館組合に出資した本件土地を訴外穴水嘉三郎に譲渡し又は本件土地に対する持分を同訴外人に譲渡したのでその当然の結果として組合員たる地位は同訴外人に移転し控訴人は右組合より脱退したものであると主張する。しかしながら控訴人において既に右土地を組合に出資した以上、該土地は組合財産を組成し組合員たる控訴人と浅野セメント株式会社との両者の合有に属するに至つたものであり、控訴人においてこれを他に譲渡し得ないことは勿論である。而して組合は社団法人と異りそれ自身権利主体たり得ないため権利帰属の関係において組合員は権利主体として組合財産に属する個々の対象につき持分を有するものと解されるが組合員はその組合員たる地位の承継によらずしてかゝる物権的持分を自由に処分し得るものではない。物権的持分の自由なる処分を許さゞるところに、組合財産が合有たることの特質が存するのである。よつて控訴人の右主張の採用に値しないことは当然である。

次に被控訴人は芝園館組合解散の際、組合員の合意を以て清算事務一切の執行を委任された者であることは、原審認定のとおりであるから被控訴人は即ち右組合の清算人に外ならざるものである。而して民法上の組合における清算人は総組合員の名を以てせず自己の名において組合に属するすべての権利を行使する権限を与えられたものであり、従つて清算事務遂行の必要なる限度において組合員の一人に対しその負担に帰すべき損失金を自己に支払うべきことを訴求する権限をも有するものと解すべきである。然らば右組合の清算人たる被控訴人が右組合の組合員たりし控訴人に対し本件の損失金の支払を訴求する当事者適格を有することも明白である。

よつて原判決は正当であつて、本件控訴は理由がないから、これを棄却すべきものとし、民事訴訟法第三百八十四条第八十九条第九十五条に則り、主文の如く判決する。

(裁判長判事 松田二郎 判事 岡崎隆 判事 奥野利一)

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