東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1473号 判決
控訴代理人は、原判決を取消す。被控訴人が昭和二十五年六月二十一日関財金第四一八号により、控訴人に対しなした同年同月二十二日から昭和二十六年六月二十一日までの業務停止命令を取消す、訴訟費用は第一、第二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は本件控訴を棄却するとの判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、本訴は確認訴訟ではなく業務停止処分の取消を求める訴訟であるから、法律上即時確定の利益を有するものに限る必要はなく、しかもその取消を求めるのは現在の業務停止の取消と共に既往の業務の停止の取消をも求めるものであつて、既往においてなされた業務停止が不法のものとして、取消されるときは業務停止以前の業務も適法のものとなり業務停止により、生じた損害の賠償を請求し得ることとなり、控訴人の利益に重大な影響を及ぼすが故に、本訴においてこれに関する権利保護を求める利益を有すると述べ、被控訴代理人において本件業務停止処分は昭和二十五年六月二十二日から昭和二十六年六月二十一日までの間控訴人の業務の停止を命じた処分であつて、その効果は現に継続しているものではない。即ち右処分は現在の控訴人の地位に対し何等の効力をも有していないのであるから、控訴人は本訴において右処分の取消を求めるにつき何等の利益をも有するものではなく、従て控訴人の本訴請求は失当たるを兎れないと述べた外、原判決の事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。
(各証拠省略)
三、理 由
案ずるに、控訴人は本訴において被控訴人が昭和二十五年六月二十一日控訴人の業務が取締法規に違背するものとして、控訴人に対してなした昭和二十五年六月十二日から昭和二十六年六月二十一日までの業務停止の処分を違法であるとして、これが取消を求めるものであることは記録に徴し明であるところ、凡そこのような処分の取消請求はその処分の効果が現に継続しておる場合、従てその処分の取消により右の処分がなされたために失はれた権利を回復し得る間に限り許されるものといわなければならない。然るに本件においては控訴人の業務は昭和二十六年六月二十一日まで停止されたものであることは前に述べたとおりであるから、右期間経過後である現在においては控訴人は、その業務につき停止処分の効果は及ぶことなく、右処分を受ける以前の権利状態と同一の権利状態にあるものというべく、特に本訴において右処分の取消を求めることを必要としない状況にあるものと解するのを相当とする。尤も控訴人において業務停止の処分が違法であつたため、損害を被つたとすれば、右損害は別途の方法により補償を受けることを講ずべきであり、また控訴人においてその業務が法規に違背してなされたために受くる制裁は本訴の勝敗と直接法律上の牽連関係はないことは言を俊たないところである。要するに控訴人は本件処分の取消を求めるにつき法律上の利益を有しないものというべきであるから、控訴人の本訴請求は失当たるを免れない。従て右請求を排斥した原判決は相当であつて本件控訴は理由がない。
よつて民事訴訟法第三百八十四条第八十九条第九十五条を適用し主文のとおり判決をする。
(裁判官 薄根正男 岡崎隆 奥野利一)