大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)1567号 判決

控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人が昭和二十五年十月十三日訴外吉田栄吉に対してなした東京都北多摩郡国分寺町国分寺字殿ケ谷戸三百三十番地内における公衆浴場営業許可はこれを取消す。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人指定代理人は、控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の陳述は、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。(立証省略)

三、理  由

被控訴人が昭和二十五年十月十三日訴外吉田栄吉に対し控訴人主張のような公衆浴場営業許可を与えたことは当事者間に争ないところである。

控訴人は、昭和二十三年東京都規則第二百四号公衆浴場法施行細則(以下細則と略称する)第七条第一項第一号によれば、浴場建物の前面は道路又は隣地に対し一、八メートル以上の空地を存していなければならないところ、本件浴場建物の前面はその東北側に隣接して建てられている控訴人方所有家屋に対しわずかに〇、三メートルの空地を存するに過ぎないから、この点において本件許可処分は右細則に違反し違法である、と主張するから按ずるに、細則第七条第一項第一号にいわゆる建物の前面の意義については当事者間にその解釈を異にし控訴人は建物の周囲全部が前面にあるものと解していることその弁論の全趣旨から明らかであるが、当裁判所は原判決と同様の理由によつて、右規定にいわゆる建物の前面とは、その建物の主たる出入口の存する面の前方の空間を指称するものと解するを正当と考えるから、ここにこの点に関する原判決の理由を引用する。而して本件浴場許可の与えられた建物の出入口がその北西側道路に面していて控訴人方の家屋に面していないことは、当事者間に争わないところであるから、細則第七条第一項第一号について前記の解釈をとるを正当とする以上控訴人の家屋に面する側においては、一、八メートルの空地を存することを要しないことは明らかであり、従つて仮に本件建物と控訴人方家屋に面する側との間に控訴人主張のように〇、三メートルの空地を存するのみであるとしてもこれを以て前記営業許可処分が右規定に違反するものといえないものというべきである。故に本訴請求はこの点において控訴人の主張自体理由がないものというべきであるのみならず、本件許可処分が違法であるかどうかは、ただ控訴人の家屋に面していない、本件建物とその出入口に面する北西道路側との間に一、八メートルの空地を存しているかどうかが問題になるだけであるが、控訴人は右のように自己の所有家屋に面していない側に右規定の空地を存していないことを理由として本件許可処分の取消を求めることができるかどうかを考えて見るに、およそ違法な行政処分の取消を求めるためには、取消を求める者の権利が、その違法な行政処分によつて侵害されたことが必要であり、然らざるものは、これが取消を求めることができないものと解すべきである。而して本件において、仮に本件建物の前記出入口の側に右規定による空地を存していないために、本件許可処分が違法であつたとしても、この部分は前記のように控訴人の所有家屋とは直接に隣接していないのであるから、本件許可処分によつて控訴人の権利は何等侵害されたものでないと解するのが相当である。従つて仮に本件許可処分が右の点で違法であるとしても、控訴人はこれを理由として、これが取消を求める権利がないものというべきである。然らば控訴人の本件許可処分の取消を求める本訴請求は理由がないから、これを棄却すべきであり、これと同趣旨に帰着する原判決は結局相当である。よつて本件控訴を棄却すべきものとして、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条を準用して主文のとおり判決する。

(裁判官 柳川昌勝 浜田宗四郎 菅野次郎)

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