大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2132号 判決

控訴代理人は原判決を取消す、被控訴人が水戸地方裁判所昭和二十四年(セ)第一一号耕作権確認調停事件調停調書の執行力ある正本にもとずき原判決添附見取図表示の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)の各点を順次連結する直線で囲まれた部分につきした強制執行はこれを許さない、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、被控訴人が本件土地につき強制執行をしてすでにこれが引渡を了したとさきに主張したのはあやまりで、まだ強制執行は終つていないからそのように変更すると述べ、控訴代理人において、右主張の変更には異議がある、強制執行が終了した点について控訴人の自認を援用すると述べた外、原判決に事実として記載されたところと同一(但し原判決事実の欄十五行目下から六字目の(乙)とあるのは(甲)の誤記である)であるから、ここにこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

被控訴人が昭和二十四年十一月二日水戸地方裁判所執行吏武藤庄司に委任して、控訴人を申立人、被控訴人を相手方とする水戸地方裁判所昭和二十二年(セ)第一一号耕作権確認調停事件調停調書の執行力ある正本にもとずき原判決添附見取図表示の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)(ヘ)(イ)を順次連結する直線をもつて囲まれた部分(甲)の土地及び同図面(イ)(ト)(チ)(ハ)(ロ)(イ)を順次連結する直線で囲まれた部分(乙)の土地について、強制執行に着手したことは当事者間に争ない。控訴人は先に右強制執行は同日終了した旨自認したが当審においてこれを取消し執行はまだ終つていないと主張するところ、成立に争のない乙第二号証(執行調書謄本)には、右昭和二十四年十一月二日右強制執行の結果執行吏は控訴人から右(甲)(乙)の土地を取上げこれを被控訴人に引渡した旨記載してあるが、成立に争のない乙第一号証の執行力のある和解調書正本はなお被控訴人の手中にあつて控訴人に交付されてないことは明らかであつて、当審における控訴人本人訊問の結果によれば、控訴人は右執行を違法としその後右(甲)の土地につき実力をもつてこれが占有をはじめ現に自らこれを使用していることがうかがい得られるところである。従つて本件土地(甲)に対する強制執行につき控訴人が異議を主張する関係においては、なお執行が継続するものと同一に解するのを相当とするから右主張の変更は許すべきものである。

控訴人は右債務名義において控訴人が引渡すべきものと表示されているのは日立市大字助川字下原二千四百二十四番地の一宅地三百六十六坪四合八勺及び同所二千四百二十三番の一宅地八十三坪の二筆であつて、これは前記(乙)の土地にあたり、(甲)の土地は含まれない、右甲の土地は同所二千四百七十三番地の六宅地四十一坪であつて、この土地は訴外株式会社日立製作所の所有で、控訴人は大正十三年頃これを同会社から賃借し今日にいたるまで占有耕作を続けてきたものであるから、前記債務名義にもとずく強制執行を受くべきものではないと主張するところ、右債務名義に表示される物件が控訴人主張の地番面積の二筆であることは被控訴人の認めるところである。原審における証人人見善の証言によつて成立を認め得る甲第一号証、成立に争のない同第二号証、原審における控訴人本人訊問の結果により成立を認め得る同第五号証の各記載に原審における証人人見善、同綿引恒之介の各証言並に原審及び当審における控訴人本人訊問の結果をあわせ考えると、日立市大字助川字下原二千四百七十三番地の六宅地四十一坪は株式会社日立製作所の所有であつてこれを控訴人は大正年間から賃借していることはこれを認めなければならない。しかしながらこの二千四百七十三番地の六の宅地四十一坪が現実において控訴人主張の右(甲)の土地に該当すること、従つて前記強制執行を受けた土地の範囲内に含まれることについては、この点に関する原審及び当審における控訴人本人訊問の結果は容易に信用できず、その他にこれを認めるべき的確な証拠はない。かえつて原審における証人佐藤勇の証言によつて成立を認め得る甲第三号証の一、二、原審における証人桜庭孝一の証言(第二回)によつて成立を認め得る乙第七号証の一、二、成立に争のない乙第八号証の二、三の各記載、原審における証人人見善、同佐藤勇、原審(第一、二回)及び当審における証人桜庭孝一の各証言、原審及び当審における控訴人(前記信用しない部分を除く)、当審における被控訴人各本人訊問の結果、原審検証の結果に本件口頭弁論の全趣旨をあわせ考えると、控訴人主張の右四十一坪の土地は元陸前浜街道の道路敷でこれが廃道となつた後払下げられたので、本来本件債務名義表示の前記二筆の土地の附近にあるべき筈であるが、右二筆は右四十一坪の土地とともにはじめ株式会社日立製作所の所有であつて、これを全部控訴人において賃借していたもので、右二筆についてはその後同会社から訴外立花寿、久保某を経て被控訴人に順次所有権が譲渡されたが、何故か右四十一坪だけは除外され、依然右会社の所有に残つているのであつて、右二筆の譲渡についてはその都度大体本件執行の目的となつた右(甲)(乙)の土地がそれとして指示されて引渡がなされて居り、控訴人もこの間格別異議を述べず、また現地においても控訴人主張の(甲)(乙)両地の境界たる前記見取図(イ)(ロ)(ハ)を結ぶ線(原審検証調書では(ハ)(ニ)の線)は控訴人が係争後に打つた木杭の外は何ら境界と認めるべき標識をそなえておらず、右(甲)(乙)の土地についての地積測量の結果は前記二筆の公簿面積と僅かに五合内外のちがいがあるだけで、大体符合することを認めることができるのであつて、これらの事実から考えると控訴人主張の(甲)(乙)の土地(すなわち本件強制執行を受けた土地)の範囲が前記債務名義表示の二筆にあたり、控訴人主張の四十一坪はその範囲外にあるものと推認するのが相当である。

しからば被控訴人が前記債務名義にもとずき本件土地((甲)(乙))に対して強制執行に及んだことは相当であつて、これに対する控訴人の異議は理由がないから棄却すべきものである。原判決が、控訴人は右債務名義における債務者であつて、債務者は物的有限責任を負担する場合においてのみ民事訴訟法第五百四十九条にいわゆる第三者となるべきものであつて、本件においては控訴人は同条による異議を主張すべき適格を欠くとしたことは、本件の債務名義が特定物の給付を内容とするものであつて、債務者は債務名義表示の以外の物件については強制執行を受けるべき理由がなく、これを受けたときは当然異議を主張しその執行の排除を求め得ることを考慮しないもので、失当ではあるが、控訴人の請求を棄却した点において、結局、相当である。

よつて本件控訴は理由のないものとして棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十五条、第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 藤江忠二郎 薄根正男 浅沼武)

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