東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2356号 判決
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(事実)
控訴人は大正十三年頃訴外株式会社日立製作所からその所有土地を賃借したのであるが、この土地についてはその後売買や相続によつて所有権の移転があり、これに伴つて順次控訴人に対する賃貸人たる地位が承継せられ控訴人はこの土地の耕作を継続していた。ところが、被控訴人は昭和二十二年七月二十五日右土地の所有者である久保きみの、久保幸子の両名からこれを買受けたのであるが、その売買については茨城県知事の許可がなく従つて所有権の移転の効力を生じないのにかかわらず、被控訴人は右土地の所有権を取得したと主張し、控訴人に対し土地の引渡を求めるので、控訴人は右土地が被控訴人の所有に属しないことの確認判決を求めて、本訴を提起した。
原審は確認を求める利益なしとして請求を棄却した。
(判斷)
控訴棄却。判決は次の理由で原審同樣確認の利益なきものとしている。
控訴人は本件土地の所有権は自から有することを主張するものではないのであるから、右土地の所有権が被控訴人の所有に属しないかどうかの問題は、被控訴人と第三者との間における所有権帰属の問題を解決しようとするものであつて、控訴人との間において所有権帰属の問題を解決しようとするものではない。従つて、このような権利帰属の問題を解決してみても、それによつて控訴人自身の権利関係については、直接には少しも解決されたことにはならないのであるから、本件土地の所有権が被控訴人の所有に属しないことの確認を求めるのは、控訴人にとつては必要のないことであつて、権利保護に値するような法律上の利益がないのである。
もつとも、控訴人の主張によれば控訴人は本件土地について賃借権を有することを主張し、地主の変更があればこれに伴つて賃貸人たる地位が承継せられる関係にあるので、被控訴人がもし売買により右土地の所有権を取得すれば、賃貸借関係は控訴人と被控訴人との間に存続することになるというのである。
しかし、右のように、本件土地の所有権が被控訴人に帰属しているかどうかということが、控訴人と被控訴人との間に賃貸借関係が存するかどうかの前提問題となつていて、この前提問題と関連して賃貸借の存否が争われているような場合には、控訴人が権利関係の当事者となつている賃貸借関係自体の存否について確認を求めるべきであつて、その前提問題となつている所有権の帰属について確認を求めるべきではない。
また、控訴人は、本件土地の売買については知事の許可がなくその効力を生じないのにかかわらず、被控訴人は右土地に対する所有権を主張してその引渡を要求して止まないので本訴を提起したというのである。しかし、被控訴人が本件土地の所有権を主張し且つ控訴人の賃借権を否認し不法占有を理由として土地の引渡を要求しているような場合には、これに対する控訴人の適切な権利保護の方法としては、所有権に基く土地引渡請求権の不存在の確認を求めるべきであつて、この場合においても、その権利の前提問題をなしている土地所有権の帰属を求めるべきものではないのである。