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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2388号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事實)

被控訴人(原告)は訴外佐野誠一に対し金三十万円を貸与し、右債権の担保として右佐野所有の本件家屋に抵当権を設定せしめ且つ期限に右貸金を返済しないときは家屋の所有権は被控訴人に移転すべき旨の停止条件付代物弁済契約をなし、昭和二十四年二月三日右抵当権設定登記並に代物弁済による停止条件付所有権移転請求権保全の仮登記を経た。然るに右佐野は貸金の返還をしなかつたので被控訴人は同年十月二十九日代物弁済による所有権取得の本登記を了した。被控訴人は右事実により自己の本件家屋に対する所有権を主張し、控訴人(被告)の不法占有を理由に家屋の明渡を求めた。控訴人は本件家屋の前所有者佐野から昭和二十四年十月二十七日右家屋を期間七年の約定で賃借し、同日右賃借権設定の登記をしたからその占有は正権原に基くものであると抗争した。原審被控訴人勝訴。

(判斷)

控訴棄却。控訴審は左記三点を判示し被控訴人を勝訴せしめた。

一、前記抵当権設定並びに停止条件付代物弁済契約をその文字どおり解するとすれば、弁済期に元金の弁済がないときは本件抵当家屋の所有権は当然に被控訴人に移転し抵当債権は代物弁済によつて消滅することとなり、被控訴人はほとんど抵当権を行使する余地がなく、抵当権を設定せしめたことが何らの意義のないことに帰着する。しかし元来債権者が債務者をして抵当権を設定せしめるとともに代物弁済契約をなす目的は、もし抵当物件の価値が債権額に等しいか、またはそれ以上である場合には代物弁済としてその物件を取得し、もしその物件の価値が債権額以下である場合には抵当権の実行によつて債権の弁済を受けその不足額については、さらに債務者の他の財産によつてこれが弁済を受けうる余地を残しおき、そのいずれか有利な方法を選んでその債権の満足をえようとするにあることが通例であるから、本件においても前記抵当権並びに停止条件付代物弁済契約の趣旨は、被控訴人において、もし抵当権を実行することを避け代物弁済によつて本件家屋の所有権を取得しよとするならば、訴外佐野においてはさらに代物弁済について意思表示をすることを要しないで、被控訴人において代物弁済完結の意思表示をすれば直ちに代物弁済の効力を生じ、その所有権が被控訴人に移転する趣旨であつて、すなわち代物弁済の一方的予約であると解するのが相当である。前記佐野は元金並びに損害金の支払をしないので被控訴人は昭和二十四年十月中代理人を通じ前記約旨にもとずき代物弁済完結の意思表示をなして本件家屋の所有権を取得し、ついで先きに佐野から受領してあつた右代物弁済による所有権取得の本登記に要する委任状等を使用して、同月二十九日その登記をなしたことを認めうる。

二、控訴人主張のような賃借権設定の登記の存することは明かであるが、前記認定のように被控訴人は同年二月三日右家屋について停止条件付代物弁済契約による所有権移転請求保全の仮登記をなし、ついで同年十月二十九日所有権移転の本登記をなしたものであつて、不動産登記法第七条第一項の規定によつて本登記の順位は仮登記の順位によることとなるから、これより後順位にある控訴人の右賃借権(假に右賃貸借契約が眞正に成立したものであるとしても)を以て被控訴人に対抗しえないものというべきである。

三、なお控訴人がその主張の賃貸借契約にもとずき右家屋を訴外佐野から引渡を受け占有するものとすれば借家法第一条の規定によつて爾後にその家屋につき物権を取得した者に対抗しうることは勿論であるが、右家屋の引渡は賃借権の登記に代わる対抗要件であつて、この賃値権を対抗せられる物権取得者との關係においては、その効力は登記の一般原則にしたがつて決せらるべきものであるから右二、において説示したと同一理由によつて控訴人は右家屋の引渡を受けたことを理由としてもその賃借権を被控訴人に対抗しえない。

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