東京高等裁判所 昭和26年(ネ)2604号 判決
控訴人は、原判決を取り消す、被控訴人は(一)厚生大臣と薬事審議会及び内閣技術院等が、控訴人の厚生省登録東薬第三百十号レベン剤並びにそのNBK療法の効果作用の実験審査申請を受理せず無視不問に付した理由を説明しなければならない。(二)レベン剤ブリル剤並びにそのNBK療法は医師法薬事法に牴触しないことを確認しなければならない。訴訟費用は被控訴人の負担とする、との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。(証拠省略)
三、理 由
控訴人の請求の趣旨(一)は、行政庁に対し、控訴人のいう療法の効果作用の実験審査申請を受理せず無視不問に付した理由の説明を求める、というのであるから、この請求は、行政庁に対し行政上の行為をなすべきことを命ずる裁判を求めるものである。しかし、憲法上の三権分立の建前から、裁判所としては、行政庁に対し、このような行政上の行為をなすべきことを命ずる裁判をなす権限を有しないのである。このような解釈は、今何人もよく承知しているところであつて、少しも問題がないのである。
次に、請求の趣旨(二)は、控訴人主張の療法は医師法薬事法に牴触しないことの確認を求めるものであるが、このような請求もまた認容することができないものである。それは、民事訴訟により確認を求める対象は、原則として、具体的の権利又は法律関係の存否についてでなければならない。しかるに、或る療法が医師法又は薬事法に牴触しないことの確認を求めるというのは、これらの法律の解釈適用の問題であり、又、その療法の法律的価値判断の問題であつて、それ自体具体的の権利又は法律関係ではないのである。何となれば、具体的の権利又は法律関係は、一定の法律事実に対し法律を解釈適用し、その結論として生じてくるものであるから、或る療法が右の法律に牴触しないということは、一定の権利又は法律関係たり得ないことは疑がないのである。控訴人のいうところは、今の訴訟制度の上においては、いずれもとうてい認める訳にはゆかないものである。
従つて、原判決は正当で控訴は理由がないからこれを棄却し控訴費用の負担については、民事訴訟法第八十九条第九十五条の各規定を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 藤江忠二郎 薄根正男 浅沼武)