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東京高等裁判所 昭和26年(ネ)576号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(事実)

被控訴人(原告)は控訴人(被告)が営業保証金として供託し供託証劵の還付請求権を転付命令により転付を受けたと主張し、右証劵の還付を受けるに必要な控訴人が千葉地方法務局館山支局から交付を受けた供託証書一通を被控訴人に引渡すべき旨の判決を求め、原審は被控訴人を勝訴せしめた。被控訴人の請求の基本となつている債権差押転付命令には、最初第三債務者を千葉地方法務局館山支局と表示し、目的債権の種類を「一、金九万三千三十八円也、債務者ヨリ第三債務者ニ対シ証劵取引法第三十条第二項ニヨリ営業保証金トシテ債務者カ千葉地方法務局館山出張所ニ供託シタ金十万円ノ返還請求権ノ一部」と表示せられていたところ、原裁判所はその後右第三債務者を「国」と更生し、ついで債権の種類を「一、金九万三千三十八円也、債務者ヨリ第三債務者ニ対シ証劵取引法第三十条第二項ニヨリ金十万円ノ営業保証金トシテ債務者カ千葉地方法務局館山支局ニ供託シタ供託証劵ノ還付請求権ノ一部」と更正する旨の決定をした。控訴人は本訴における抗弁の中で右の点を攻撃し、債権差押及び転付命令が送達された後は、原則として申請要件に關しない小さな誤謬を発見した場合にのみこれを更正し得るに止まり、前記のように申請要件たる第三債務者及び差押及び転付の目的たる債権等を当初の決定と全然異つた第三債務者及び種類の異つた債権に更正するがごときは許すべきではない。右のような場合は申請が第三債務者及び目的債権を誤つた不適法な申請であるから、これを却下すべきであつて、これに基いて差押及び転付命令を発すべきではない。仮に誤つて命令を発しても該命令は法律上無効であつて、後日第三債務者及び目的債権を更正してこれを有効な命令とすることはできない。從て本件差押及び転付命令によつて、その目的たる本件供託証劵の還付請求権は債権者たる被控訴人に移転の効力を生じない、と主張する。

(判斷)

控訴棄却。前記控訴人の主張に対する控訴審の判断は次の通りである。

証劵取引法第三十条第二項の規定により証劵業者が供託した営業保証金(現金または代用證券)の還付請求権に対する債権差押及び転付命令に表示さるべき第三債務者は、営業保証金を受入れた法務局、地方法務局またはその支局等を表示すべきでなく、国を表示すべきものと解すべきであるから、原裁判所が命令に千葉地方法務局館山支局と表示したのは法律上明白な誤謬であり、また右命令の目的債権の表示を誤つたのは控訴人が供託した営業保証金が、現金代用証劵であつたのを現金で供託されたものと誤つたため生じたもので、かような表示の誤りもまた法律上明白な誤謬というべきであるから、原裁判所のなした前記更正決定は適法である。右のように第三債務者及び目的債権の種類の表示を謬つた債権差押及び転付命令の申請が当然不適法として却下せらるべきものでないことは、民事訴訟法第二百七条によつて準用せられる同法第二百二十八条の規定から見て明かであり、かような申請に基いてなされた債権差押及び転付命令であつても、法律上当然無効ではなく、その表示が前記のように明白な誤謬と認められる限り、これを更正することは何等違法でなく、更正された差押及び転付命令は当初より適法なものというべきである。またその誤謬が明白なものである限り決定のいかなる部分でもこれを更正できるものと解すべきのみならず更正に異議ある場合には即時抗告を以て争うべきであつて、本件においては右更正決定が即時抗告期間の経過により確定したことは本件弁論の全趣旨から明かであるから、控訴人は今更右更正の適否を争うことができないものといわなければならない。よつて控訴人の右主張は採用できない。

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