東京高等裁判所 昭和26年(ラ)4号 決定
よつて判断するに、本件抗告の不服の対象である行政処分執行停止決定の取消決定の本案訴訟は相手方が昭和二十五年十一月十七日芦選告示第三十九号を以てした同年十二月八日芦川村々長の選挙を行う旨の告示の無効確認を求めるものであることは本件記録によつて明白である。
おもうに、地方自治法、公職選挙法の規定を通覧するときは、地方公共団体の長に対する選挙については選挙爭訟の手続の準用により選挙管理委員会に対する異議、訴願を経て高等裁判所に出訴する方法のみが許され、選挙爭訟手続に於てはこれを構成する各個の行爲につき独立の爭訟を許さない法意であることは明白であると考えられる。
從つて本案訴訟はその主張自体理由がないものと認められ、然も抗告人は原審に於てその本案訴訟に於て敗訴の判決の言渡を受けたことを自ら認める以上敗訴の理由は本件記録によつては明かではないが、右敗訴の判決が不当であつて抗告人の請求が是認せらるべきものであることを認めしめるに足る格段の資料とてない本件に於ては行政事件訴訟特例法第十條による行政処分の執行停止をなすべきものでないと云わなければならない。
よつて原裁判所がさきになした本件告示の効力の執行停止決定を取消したのは洵に相当であつて本件抗告は理由がないから主文のとおり決定する。
(裁判官 渡辺葆 浜田潔夫 牛山要)
抗告状
山梨縣東八代郡芦川村鶯宿
抗告人 宮川安朝
同縣同郡同村
相手方 芦川村選挙管理委員会
及代表者委員長 藤原美貞
右当事者間の甲府地方裁判所昭和二十五年(行モ)第一二号「行政処分執行停止申立事件」に付申立人は左の通り抗告する。
抗告申立の趣旨
右事件に付昭和二十五年十二月七日当裁判所がなした相手方芦川村選挙管理委員会が同年十一月十七日芦選告示第三十九号でした同年十二月八日芦川村々長の選挙を行う旨の告示の効力を停止する旨の決定は之を取り消すとの決定は更に取り消す旨の裁判を求める。
申立の理由
一、抗告人は肩書居村々長であるが昭和二十五年十一月一日告示第十六号を以て同月五日午前九時と指定して同村々議会を招集した。
二、所が同日同時刻になつても同村々議会議員十一名が出席せず五名のみしか出席しないので抗告人は、同日午後四時二十分頃再度同日午後六時三十分と指定して再度同村議会を招集して各村議会議員宛通知した。
三、而して右再度招集した定刻午後六時三十分右議会を開会出席議員五名にて議事を終了したので午後七時三十分閉会した。
四、所が同村々議会議員渡辺亘外十名の同村議会議員は前項会議の閉会後参集して濫に抗告人の不信任を決議し之に基き同村選挙管理委員会は昭和二十五年十一月十七日芦選告示第三九号を以て芦川村々長選挙期日を同年十二月八日と定めた。
五、其処で抗告人は前項渡辺亘外十名の同村々議会議員を被告として決議不存在確認の訴を提起すると共に同村選挙管理委員会を被告として選挙告示無効確認の訴を提起し(甲府地方裁判所昭和二十五年(行)第八一号選挙告示無効確認事件)たのである。
六、即ち被告人は右渡辺亘外十名の同議会議員のなしたる第四項抗告人不信任決議は何等法的に存在するものでないので之に基く同項村長選挙を行う旨の告示は無効のものたることを主張し同時に抗告人は右判決の結果を俟つに於ては村長の選任が行われて右村長確定迄は選挙告示の執行を停止するの要があり、若し停止が許されないとすると村長が二人存在することゝなり、計り知れない暴力的悲惨事の突発も保し難いと思料されるので、本案判決確定迄執行の停止を求めて甲府地方裁判所昭和二十五年(モ)第一二号行政処分執行停止命令が発せられたのである。
七、而して抗告人は昭和二十六年一月九日同裁判所に於て右選挙告示無効確認事件に付敗訴の判決言渡を受けたが、同時に同裁判所は右執行停止命令をも取消す旨の決定をなしたのである。
八、然し抗告人は右判決に対し不服であるので、更に控訴の申立を爲すべく目下準備中であるが從つて本件決定に対しても不服であるので茲に抗告する次第であるから更に右決定を取消すべく申立の趣旨の御裁判を求める爲本抗告に及んだのである。