大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(新う)1083号 判決

被告人田中の弁護人O外一名連名の控訴趣意第一点、同K外二名連名の控訴趣意第三点、同Iの控訴趣意第一点について。

按ずるに原審公判調書の記載によれば原審第十四回公判期日において検察官は被告人等の「日本政治経済新聞配布による事前運動の事実及び被告人田中と菊岡八百三、加々美晴行との関係を立証するため当庁に繋属する被告人菊岡八百三、加々美晴行等に対する衆議院議員選挙法違反被告事件の証人山田歌子の調書」の取調を求めたところこれに対し同第十八回公判期日において原審弁護人はこれを証拠とするに同意せず証拠調に異議があると述べているに拘わらず同第十九回公判期日において原審裁判官は「山田歌子の証人調書の取調をする」旨の決定を宣し次いで裁判官は山田歌子の証人調書を朗読し以てこれが証拠調をなし検察官は右山田歌子の証人調書については許可を得てその謄本を提出していることが認められ又右に謂うところの「山田歌子の証人調書」とは東京地方裁判所裁判官駒田駿太郎が新潟地方裁判所裁判官の嘱託による被告人菊岡八百三、同加々美晴行に対する衆議院議員選挙法違反被告事件に関する証人山田歌子に対する昭和二十四年十二月十五日附証人尋問調書(記録第二冊一五二八丁参照)を指称するものであることは明かである。そこで右山田に対する駒田裁判官の尋問調書について考えるのに右は本件被告事件とは別事件の公判準備における被告人以外の者の供述を録取した書面であるから仮令裁判官の面前における供述を録取した書面であるからとて刑事訴訟法第三百二十一条第二項は適用されないものと解すべく被告人においてこれを証拠とすることに同意しない限り同法第三百二十一条第一項第一号に規定する場合のほかは証拠とすることはできないものであるといわなければならない。然るに本件記録全体を通じて考えても同人が刑事訴訟法第三百二十一第一項第一号に規定されている孰れかの場合に該当するものであることは到底これを認めることはできない。それゆえ原審弁護人が明かにこれを証拠とすることに不同意を表明しているのに拘わらず原審がこれにつき証拠調を施行し且原判示(一)の(A)の(い)(ろ)同(二)の(A)(B)の事実認定の証拠としてこれを引用していることは原審の訴訟手続には法令の違反があるものといわなければならない。しかし前記の犯罪事実は右山田歌子の証人尋問調書を除いても原判決の挙示引用するその余の証拠によつて優にこれを認めることができ右山田歌子の裁判官に対する証人尋問調書の記載は単に前記犯罪事実につき原判決の挙示する他の適法な証拠(当裁判所は右の犯罪事実認定の資に供した他の証拠は孰れも適法のものであると認める)の証明力を強めるに過ぎないものと認められるから敍上の違法は未だ判決に影響を及ぼすものとはなし難い。なお原審第十九回公判期日において取り調べられた山田歌子の裁判官駒田駿太郎に対する証人尋問調書がその原本であること及び検察官は裁判所の許可を得て原本に代えその謄本を提出していることは同日の公判調書の記載により明らかであるから検察官は裁判所の許可がないのに原本に代えて謄本を提出していると非難する論旨も採用できない。それゆえ各論旨は孰れも理由がない。

弁護人K外三名連名の控訴趣意第九点、同Kの控訴趣意第一点の(一)の(ロ)(ハ)(ニ)について。

原審公判廷において所論の各証人が孰れも刑事訴訟法第百四十六条に該当することを理由として証言の一部を拒否していることは論旨の指摘するとおりであるが同法第三百二十一条第一項第二号に謂うところの「その供述者が死亡、精神若しくは身体の故障、所在不明若しくは国外にいるため公判準備若しくは公判期日において供述することができないとき」とはその供述者を証人として公判準備若しくは公判期日に喚問することが不可能であるか又は喚問し得るとしてもその供述を得ることができない場合を例示したものと解すべきであるからその供述者が公判期日において前記第百四十六条により証言を拒否しその供述を得ることが不可能の場合においては右証人の検察官の面前における供述を録取した書面は前記第三百二十一条第一項第二号によつてその証拠能力を認め得るものと解するのを相当とする。従つて原判決が論旨摘録の検察官或いは検察官事務取扱検察事務官に対する加々美晴行等の供述調書を以て孰れも証拠能力ありと認めて原判示事実認定の証拠として引用していることは適法であるといわなければならない(本件における検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書は検察官に対する供述調書と考うべきであることは前敍のとおりである)なお原審第十八回公判調書によれば原裁判所は証人として藤田徳三、倉又正義、永井保、田村実、荒木三代治、高橋勇吉等を取り調べ以て所論の各供述調書について夫々供述の任意性をたしかめており且右証人の供述その他本件訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている一切の事実を精査すれば右各供述は孰れもこれを信用すべき特別の情況の存することが認められる。それゆえ各論旨は孰れも理由がない。

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