大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(行ナ)6号 判決

本件実用新案は、昭和二十五年六月三日の出願にかゝり、その考案の要旨が、「硝子繊維、綿、麻又は紙等の撚糸(1)を経緯(5)(6)とした比較的荒目の織布(2)にアスフアルト、ピツチ等の瀝青質又はこれに油を混入した適宜濃度の熔融物を織布(2)の荒目(3)を通じてこれを目潰しすると共に、その織布(2)を芯として其の表裏両面に被覆(4)(4)を一体的に形成して成る可撓性絶縁板の構造」であることは、その成立に争のない甲第一号証の記載によつて明白である。しかるに、その成立に争のない甲第六号証によれば、昭和十九年五月三十日技術院発行の実用新案登録第三四二四四八号公報には、従来繊維織布にアスフアルト系絶縁塗料を塗布して作製した電気絶縁布は、電気絶縁性及び耐久性において優れているが、耐油性に欠けているから、アスフアルト系絶縁塗料層の表面に、油脂系塗料被膜を形成させた耐油性電気絶縁布を造ることが記載されている。この記載から見ると、従来織布にアスフアルト系絶縁塗料を塗布した電気絶縁布が、本件の登録出願前に公知であつたことが認められる。よつて本件の考案と、右の公知の電気絶縁布とを比較して見ると、両者は、織布にアスフアルト系絶縁塗料を塗着させた構造において一致する。たゞ本件考案においては、織布として「比較的荒目の織布」を用い、また、アスフアルト系塗料として、「アスフアルト、ピツチ等の瀝青質に油を混入したもの」をも用いているのに対し、引用例にはかゝる記載がない。しかしながら、織布の粗密、殊に登録請求の範囲にかゝげられた「比較的荒目の織布」の程度は、使用目的に応じ、特に考案力を要しないで、当業者が適宜選択し得る程度のものと解せられ、アスフアルト、ピツチ等を塗り易く、かつ、浸透させるために、これに油類を混入することは、極めて普通に行われている事項である。また、本件考案が、従来公知の構造にかゝるものに比して、特にすぐれた実用的効果があるとの事実は、これを認めるに足る何等の証拠もない。して見れば、結局本件考案は、右に述べた公知のものと、その構造及び実用的効異の上において、類似の範囲を脱せず、実用新案法第三条第一号により、同法第一条に該当しないものといわなければならない。抗告審判の理由も、結局右と同一の趣旨に出でたものと解せられ引用実用新案の要旨と、本願の要旨とが類似であると説示したものではないから、これと反対の見解に立ち、被告は、本件考案の要旨と引用例の要旨を誤解し、これについて審理をつくさず、また両者の構造の著るしい相違及び本件考案の特に優れた実用的効果を看過したとして、審決を非難する原告主張の(1)(2)(3)及び(5)は、採用することができない。

次に、原告の出願当初の説明書には、その登録請求の範囲として、「図両に示すように(中略)比較的荒目の織布(2)に(下略)」と記載し、図面には明かに織布一枚を示し、また、実用新案の性質、作用及び効果の要領にも、織布を数枚使用することについては何等記載するところがない。して見れば、原告がその後抗告審判にいたり、説明書を請求原因一、後段記載のように訂正したのは、要旨を変更したものと解すべきであるから、審決が原告主張のように説示したのは相当であつて、原告主張(4)も、採用することができない。

〔編註〕 本判決は、既存の技術より容易に考案しうるものであるから本条にいう「考案を構成しない」としないで、三条の適用を経ている。この点における法の適用を混同した判決として代表的なものである。

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