東京高等裁判所 昭和27年(う)1011号 判決
被告人の控訴趣意第一点及び第二点及び弁護人の控訴の趣意(いずれも事実誤認、法令適用の誤の主張)について。
原判決挙示の各証拠を綜合すれば、原判決各摘示の横領の事実は優にこれを認定することができる。即ち、被告人は中村司所有でその父中村復一郎が管理している原判示第一の土地四千三百余坪を借受け使用占有中その一部二百坪を擅に第三者に売却し(原判示第一事実)或いは、右土地四千三百坪中二千坪を原判示第二冒頭の条件で買受ける契約をしたが、分割支払代金の第一回を支払うまでは、右土地所有権は買主たる被告人に移転せず、土地所有権を他に移転したり、物権、賃借権の設定をしない約定で右土地の引渡を受け耕作占有中、第一回の代金を支払わない前に、原判示第二の(一)乃至(五)のようにそれぞれ、擅に第三者に売却又は賃貸し(原判示第二事実)、右土地の中政府が自作農創設特別措置法により、中村司から買収した上、被告人に貸与し、被告人が小作占有していた土地の一部を擅に第三者に売却した(第三事実)という事実が原判決挙示の証拠によつて十分認められ、以上のように自己が他人から借受け又は買受契約をしたが、第一回の分割代金支払まで、売却、賃貸その他の処分を禁止せられている場合に、これを擅に売却又は賃貸する行為は不法の処分行為であつて、横領罪を構成すると解すべきであり、横領罪の成立には登記簿上の所有名義の移転その他権利の設定又は移転を要するとする主張は失当である。
又所論の公正証書に「買受けたり」と記載されていることだけから、処分権があることを主張し、或いは売主の法定代理人中村復一郎の諒解を得たとの被告人の主張は独自の見解で且つこれを裏付けるに足る何等の資料もないから、到底これを採用できない。
原審には何等事実誤認及び法令適用の誤はなく、論旨はいずれも理由がない。