東京高等裁判所 昭和27年(う)1849号 判決
原審が証拠に採用しておる被告人森英男に対する検察官の供述調書がその供述に際し読聞けられた犯罪一覧表の記載と相俟つて完全な証明の作用をなすものであることは所論の通りである。然るに記録によれば、右供述調書の前には土屋純三外一名窃盗事件犯罪一覧表と題する書面はあるけれどもこれと右供述調書との間には契印もなくその他同供述調書の一部と認むべき何等の事跡も存しないから同供述調書とは全く別個の独立のものと認むるの外なく、しかも右一覧表につき適式な証拠調を施行した形跡がないから斯る書面で証拠調のなされていない書面を受理しこれを訴訟記録に編綴した原審の措置は妥当を欠くがしかし原審は被告人森英男に対する検察官の供述調書については適法な証拠調をした上これを証拠として判決に援用したが右犯罪一覧表はこれを証拠として援用しておらないのであり記録を精査するも原審が右犯罪一覧表を受理したことにより特に被告人に不利益を及ぼしたものとも認められないから仮りに右犯罪一覧表を受理した原審の訴訟手続が違法であるとしても結局右訴訟手続上の違法は判決に影響を及ぼさなかつたものと認むべきである。又被告人森英男に対する検察官の供述調書は所論犯罪一覧表と相俟つて完全な証明の作用をなすものであるがこれ自体独立した供述調書であるから右一覧表について証拠調をしなくても右供述調書について適法な証拠調がなされたこと前段叙説の通りである以上これを判決の証拠に援用したからといつて適法な証拠調を欠く供述調書によつて事実を認定したとの非難は当らない。のみならず原判示被告人森英男に関する犯罪事実は右供述調書を除くも原判決挙示のその余の証拠(論旨第一点に対する判断において挙示した証拠)によつて優にこれを認めることができるから論旨はいずれも理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)