東京高等裁判所 昭和27年(う)2169号 判決
原判決が証拠によつて認定した事実は、被告人は予てから判示伊藤久から保管を頼まれて所持していた金員を擅に領得しようと思い、同人を殺害して、以て、同人から返還の請求を受けることのできないようにした、というのである。金員の保管を委託された場合、たとえ委託者が死亡したとしても、受託者において法律上返還の義務を免れる筋合ではないが、受託者において右金員を領得しようとして委託者を殺害した上、事実上返還の請求を受けることなき結果を生ぜしめたときは、正に受託者は刑法第二三六条第二項に、いわゆる暴行を以て財産上不法の利益を得た者に該当する。従つて、原判決がその判示事実に対し、判示のごとく刑法第二四〇条後段の規定を適用して被告人を処断したのは、まことに正当であつて、毫も違法ではない。