東京高等裁判所 昭和27年(う)2741号 判決
本件起訴状には、その始めタイプライターで滝田稔とあつたのを筆墨で滝崎稔と訂正されているところであつて、その記載及び本件訴訟の経過に照らし、本件公訴は、被告人滝崎稔に対して提起されたものであることが洵に明白である。なるほど、被告人に送達された起訴状の謄本には被告人滝田稔とあつたことは、認められない訳ではないが、記録編綴の起訴状謄本の送達報告書並びに同謄本と同時に送達された弁護人選任に関する通知及照会書には就れも被告人滝崎稔殿とあるに徴しても、被告人に送達された起訴状謄本に被告人滝田稔とあるは明らかに、滝崎稔の単なる誤記乃至は誤まつた表示たるにすぎないことが明白である。所論は、この明白な誤記乃至は誤まつた表示にかかる単なる形式上の過誤を捉えて、本件起訴を敢えて滝田稔に対する起訴であると強弁するに帰し、原審が、刑事訴訟法第二百四十九条所定の趣旨とする不告不理の原則に反して敢て被告人滝崎稔に対し審判した違法があるとする論旨は採用するに由なく理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)