東京高等裁判所 昭和27年(う)2804号 判決
仍つて本件記録を精査し、原判決を詳細に検討勘案するに、原判決によれば、被告人等は原判示各講金を判示のとおり騙取した旨認定し、これに対して詐欺罪を以て問擬していること、その記載に徴し極めて明白である。然し乍ら詐欺罪の騙取と謂うは、他人に欺罔手段を施し錯誤に陥し入れ因つて同人より自己に財物を交付させること、換言すれば、他人の占有に在る物を自己の占有に移させることを意味し、自己の占有に属する他人の物については、騙取の観念を容れる余地は存しない。
されば自己の占有に属する物の場合にはその領得に仮に欺罔手段を用いたる場合と雖も、横領罪の成立するは格別、詐欺罪を構成すべきものではない。
飜つて本件記録上証拠に現われている全事実及び当公判廷における各被告人の供述を綜合すれば、原判決において、被告人等が騙取したとされる原判示各講金は、孰れも講元たる各被告人自らの占有管理に属したものであることを認めざるを得ない。果して、然らば、各被告人が原判示各講金を夫々騙取した旨の事実を認めた原判決は、事実の誤認があるものであつて、右誤認は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、到底破棄を免れない。