大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)2847号 判決

被告人 馬場保永 外二名

〔抄 録〕

一、被告人甲、同乙の弁護人Aの控訴趣意第一点について。

所論の(1)占領軍軍人向石油製品購入通帳(原判決理由第一の二の(一)、第二の一の(一)第三の一の(一)の(イ)関係)及び(2)の一般外国人向石油製品購入通帳(原判決理由第一の二の(二)、第二の一の(二)及び第三の一の(一)の(ロ)関係)(以下購入通帳と略称する)は従前総司令部において取り扱はれていた欧米式生活様式を必要とする者の使用する自動車に対する石油製品の配給業務が昭和二十五年七月一日以降全面的に運輸省に移管されるに伴い、連合国軍人軍属に対する緊急用自動車用石油製品の配給業務も同日以後運輸省において取り扱うことになり、欧米式生活様式を必要とする者で日本の正規の割当量をこえて自動車用石油製品の割当を受けようとする者及び連合国軍人軍属で緊急に自動車用石油製品の割当を受けようとする者に対しその者に申請に基き同省名義を以て前記各購入通帳を発行するに至つたものであつて、同日以降昭和二十五年八月十四日迄は外国為替銀行において同年八月一五日以後は都道府県陸運事務所において右購入通帳の発行事務を取り扱つたものであるが右外国替為銀行並びに陸運事務所が右購入通帳の発行事務に関与したのは運輸大臣の委任に基き同省のなすべき事務を代行したものに外ならない。(原審公判廷における証人田中秋吉の供述記載、及び昭和二十五年六月二十三日自二資第七二号運輸省自動車局長通達、昭和二十五年八月十五日運輸省令第六〇号により改正された自動車用石油製品割当規則同年八月十五日自燃第八号運輸省自動車局長通達参照)従つて右購入通帳に上記外国為替銀行又は陸運事務所の名義を表示するのはその発行事務を担当した機関並びに担当者を明確ならしめる為の措置に外ならないのであつて、この故を以て、右購入通帳の発行名義人が叙上の外国為替銀行又は陸運事務所であり、これらの表示を欠く通帳は未だ購入通帳としての作成名義を欠くものであるとすべきではない。本件各購入通帳にはいずれもその名義人として、運輸省の名が英文を以て表示されておるのでありこれを運輸省の署名ある同省の発行すべき公文書であると認めるに足るのである。本件購入通帳には、正式に発行された通帳には当然表示される筈の発行事務取扱機関及びその担当者の表示を欠いているものがあることは所論のとおりであるが本件文書の性質に鑑みその形式外観において一般人をして、正当に運輸省から発行された有効な購入通帳であると信ぜしむるに足るものであることは本件記録並びに各証拠品に徴してこれを認めうるところであるから原審がこれを公文書偽造罪に問擬したことは相当であつてこの点の論旨は理由がない。

二、同第二点について。

原判決がその理由第三の一の(二)として判示するところは、被告人乙が前示第三の一の一(ロ)記載の偽造一般外国人向石油購入通帳に編綴されている石油製品購入証明書中に判示のような各偽造印章を押捺して東京都陸運事務所の作成すべき同事務所名義の石油製品購入証明書合計四十葉を作成偽造したと言うのであるが、右事実認定に挙示する証拠によるも、同被告人の所為は前示認定に係る僞造購入通帳に発行事務担任機関並びにその担当者の名義を表示してその記載内容の空白部分を補充したに止まり、判示のように、運輸省発行名義の僞造購入通帳とは別個の公文書を作成僞造したものとは認め難く、ただ、その判示の如き印章を押捺しその印影を顯出せしめた点において、夫々公務所たる東京都陸運事務所並びに公務員たる田中秋吉の各署名を僞造したものと認めうるに過ぎない。故にこの点において、原判決は事実を誤認しひいて法令の適用を誤つた違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は結局理由があり原判決中被告人乙に対する部分は破棄を免れない。

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