東京高等裁判所 昭和27年(う)2896号 判決
原判決がその挙示の各関係証拠によつて原判示窃盗、詐欺、横領の各事実を認定していることは、まことに所論のとおりである。
よつて、記録を精査し、右各認定事実とその各関係証拠とを詳細に比較対照してみると、右各事実とその各関係証拠の一部との間には、いずれも所論のくいちがいがあり、従つて原判示各事実は、原判決挙示の各関係証拠によつては到底これを認定することができないことが明らかである。
以下順次これを説明すると、原判示第一、第二の各事実と原判決挙示の各関係証拠の一部との間には所論のようなくいちがいがあるが、右第一の事実は、原判決が(一)原判示第三の事実認定の証拠として挙示している各証拠と(二)原判示各事実全部に通ずる証拠として挙示している各証拠とを総合してこれを認めることができ、右第二の事実は、原判決が(一)原判示第四の事実認定の証拠として挙示している各証拠と(二)原判示各事実全部に通ずる証拠として挙示している各証拠とを総合してこれを認めることができ、原判示第三、第四の各事実と原判決挙示の各関係証拠の一部との間には所論のようなくいちがいがあるが、右第四の事実は、原判決が(一)原判示第一及び第二事実認定の証拠として挙示している各証拠の一部と(二)原判示各事実全部に通ずる証拠として挙示している各証拠とを総合してこれを認めることができるのである(原判示第三の事実については、同弁護人の控訴の趣意第二点に対する判断において説明する)。されば、原判決には、刑事訴訟法第三百七十八条第四号にいわゆる判決の理由にくいちがいがあることが明白でありかかる判決中の重大な瑕疵を目して原判決の証拠説明中「第一及び第二の点に付」とあるのは、「第三及び第四の点に付」の誤記であり、又「第三の事実に付」とあるのは「第一の点に付」の誤記であり、「第四の事実に付」とあるのは「第二の点に付」の誤記であるとして前記の瑕疵を不問に附することは到底許されないものといわなければならない(原判決挙示の各関係証拠中には、原判示各事実に添うような証拠はあるが、これ等の証拠は、いずれも被告人の自白を内容とするものであり、原判決は右各証拠以外に原判示各事実を認めうべき適格な証拠を挙げていないのであるから、右自白を内容とする各証拠のみをもつて原判示各事実を認定することができないことは所論のとおりである)。
従つて、論旨はその理由があるものというべきである。