大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)328号 判決

原審が判示第二として認定した事実に対し、その罰条として薬事法第二十九条第一項及び同法第三十七条第一項を併記しており、また同法第二十九条第一項違反の罪が第三十七条第一項違反の罪より重きに鑑み、原審が原判示第二事実において「所轄千葉県知事の医薬品販売業の登録を受けないで」と判示した事実を以つて単に同判示後段の薬事法第三十七条第一項違反の罪の情状として判示したものと解せんとする所論主張は、これを採用し難いところであるが、職権をもつて考察するのに、元来薬事法第三十七条に所謂販売業者とは同法第二十九条所定の登録を受けた者のみを指称し店舖を有する医薬品の販売業者又は配置販売業者にして右登録なき者或は例えば単なる行商人の如き店舗を有せずして医薬品を販売する業者は右薬事法第三十七条に所謂販売業者に該当しない。つまり同法第二十九条所定の登録を受けずして店舖を開き医薬品の販売業を営む者及び医薬品の配置販売業を営む者並びに単なる行商人の如き店舖を有せずして医薬品の販売業を営む者は薬事法第二十九条第一項乃至第四十四条第八号に違反し、同法第五十六条に触れるものとして処罰の対象とはなるが、その上になお同法第三十七条の適用なきものと解するを相当とする。蓋し、右所定の登録を受くることなく薬事法に違反して医薬品を販売する業者に対し薬事法第三十七条第一項の定むるところに従い毒薬又は劇薬の販売乃至授与の都度文書にその品名、数量、使用の目的、譲渡の年月日並びに譲受人の氏名、職業及び住所を記載し、且つ譲受人をしてこれに印を押させることを需めてこれを取締らむとするが如きは全く不可能を求むるに等しく、従つて、薬事法は右販売業者にして既に同法第五十六条により処罰さるるものである以上これが販売業者において敢て斯かる文書を作成するところがないからといつて、特に同法第三十七条第一項に違反するものとして同法第五十七条をもつて処罰するの法意でないと解するを相当とする。この事は薬事法第二十九条第一項又は同法第四十四条に違反した場合の罰条である同法第五十六条が、同法第三十七条第一項違反の処罰規定たる同法第五十七条よりその法定刑において重いもののあることに鑑みるも首肯し得るところである。

果して然らば、これを原判示第二事実について考察するに、原審が薬事法第二十九条第一項に違反するものとし乍ら犯罪場所として単に「被告人方において」としてあるだけで果してそれが店舖を有する販売業者であるのか、それとも配置販売業者であるのか判示するところなく、又仮にそれが「被告人方店舖」の意味であるとするも記録及び原判決挙示の証拠を通じ、被告人において、医薬品の販売業を営むため特に被告人方を薬事法第二十九条第一項に所謂店舖とした事跡あるを確認し難く、従つて原判決には右の点において刑事訴訟法第三百七十八条第四号に所謂判決に理由を附せず又は理由にくいちがいがある違法ある外所定の登録を受けないで薬事法第二十九条第一項に違反して医薬品の販売業を営んだものとして同法第五十六条に触るる趣旨の事実を認定し乍ら、更に同法第三十七条第一項所定の如き文書を作成しなかつた事実を認定してこれに同法第五十七条を適用して明らかに判決に影響を及ぼすべき誤りのあることが明白であるから、原判決は孰れにしてもその破棄を免かれない。

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