東京高等裁判所 昭和27年(う)3530号 判決
〔抄 録〕
被告人塙守の弁護人坂吉兵衛の論旨第一点について。
原判示第二の犯罪事実は、これに関する原判決援用の証拠を総合してこれを明認することができる。刑法第二百四十条前段の強盗致傷罪は、いわゆる結果犯の一種であつて、数人が強盗を共謀した場合、その内の一人がその強盗の手段として行つた暴行により傷害の結果を発生させたときは、強盗の共謀者全員が強盗致傷罪の責を負うべきことは当然であつて、これは、最高裁判所の判例においても一致するところである。従つて、被告人塙守が相被告人中村茂及び原審相被告人安藤進と本件の強盗を共謀した以上、被告人塙守は、右他の共謀者がこの強盗の手段たる暴行により発生させた本件傷害の結果を予期しなくても、強盗致傷罪の責を負うべきことは、言うまでもないところである。かかる場合被告人または弁護人においてかかる致傷が当該被告人の行為によるものではなく且つこの点に関する共謀もないことを理由に、この部分の無罪を主張しても、これは、前記法条の解釈上認容されないところであつて、しかも、かかる主張は、刑事訴訟法第三百三十五条第二項の主張に当たらないことは明らかであるから、判決上ことさらこれに対する判断を掲げる必要があるものではない。(なお、原判決が原審における被告人塙守及びその弁護人のかかる主張を排斥していることは、その判示自体に徴して明らかである。)また、前記原判決援用の証拠によれば、被告人塙守が所論のように相被告人中村茂を恐れるの余りやむなくこれに追従したものでないことは明らかである。記録に顕れた原審における審理の経過に徴するも、原審の審理に不尽の点は認められない。原判決には所論のような理由不備事実誤認、判例違反又は法令適用の違背は存しない。論旨は、理由がない。