東京高等裁判所 昭和27年(う)3675号 判決
本来差押と捜索とは別個の行為であり、差押をする場合には必ず捜索を伴うものとは限らないものであるところ、国税徴収法第二〇条、第二一条によつても収税官吏が滞納処分のため滞納者の財産を差し押えるに際し、差し押える物件を発見することのできない場合に限つてこの捜索権を行使して滞納者の家屋、倉庫等の捜索をすることができる旨定めたものであつて、捜索をする場合に初めて立会人を必要とするものと解せられるのであるが、原審証人枦山茂男の公判供述によれば同人が沢田初一方において六点の物件を差し押えるについて格別捜索はしていないことが確認できるのであるから、原判決が本件差押行為は立会人を必要としないものと認定したのは正当である。次に沢田初一が本件差押調書への署名捺印を拒否したことは本件記録によれば明白に認めうるのであるが、国税徴収法施行規則第一六条第二項には国税徴収法第二一条の場合においては収税官吏は立会人と共に差押調書に署名捺印すべし、但し立会人において署名捺印を拒み又は署名捺印すること能わざるときは其の理由を附記すべしと規定していて立会人が差押捜索に立会つても差押調書への署名捺印を拒否することのある場合を法令もこれを予想しているのであつて、署名捺印を拒んだという事実があつたからというだけでは立ち会わなかつたものとは認められない。
ところで、原審証人枦山茂男の供述によれば沢田初一は本件差押に立会つたものであることはこれを認めるに十分である。
仮に原判決に所論のような事実の誤認があつたとしても元来本件差押には立会人を必要としないものであることは前説明のとおりであるから、この誤は何等判決に影響を及ぼすものとは認められず、原判決には所論のような違法の存するものではない。
論旨は理由のないものである。