大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)4189号 判決

被告人 大沢近吉

〔抄 録〕

論旨第一点について。

記録を調査するに、原審における第一回公判期日以前において、原裁判所が、昭和二十七年十月二十三日附書面を以て、被告人の本籍地役場にあてて発した照会に対し、同役場から同月二十八日附を以てした回答書が本件記録第二十五丁に編綴されていること、及び、該回答書には、被告人が、昭和二十二年六月二十四日、宇都宮地方裁判所足利支部において、窃盗罪により、懲役二年(五年間執行猶予)に処せられ、昭和二十七年政令第一一八号減刑令により、右刑を懲役一年六月、猶予期間昭和二十七年四月二十八日満了に変更された旨の記載があることは、いずれも、所論のとおりである。而して、新刑事訴訟法の建前としては、第一審裁判所の裁判官はいわゆる起訴状一本主義に従い、第一回公判期日までは、あらかじめ、事件について、なんらの先入的心証を抱くことなく、全く白紙の状態において、審理に臨むべきものであることも亦、所論のとおりであり、且つ最高裁判所が詐欺の起訴状の記載事項につき示した判例(昭和二十五年(あ)第一〇八九号同二七年三月五日大法廷判決)の趣旨を類推するときは、窃盜を公訴事実とする本件において、前示のような被告人に窃盜の前科がある旨を記載した書面は、所論のように公訴事実につき、裁判官に予断を生ぜしめる虞のある書類にあたるものというべきであるから、原裁判所が、第一囘公判期日以前において、このような書面を徴したことは、前示起訴状一本主義を採用した刑事訴訟法の精神に照らし違法であるといわなければならない。しかしながら、原審第一回公判調書中被告人の供述記載によれば、被告人は、原審公廷において、公訴事実を自白していることが認められるのであつて、この事実と、原判決書の記載、並びに、原判決が証拠として挙示する各書面中の記載をそう合するときは、原審の訴訟手続における前示の違法は本件の判決に影響を及ぼさなかつたことが窺われるのであるから、これだけでは、未だ、原判決を破棄すべき理由とするに足りない。論旨は理由がない。

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