大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和27年(う)4585号 判決

被告人 里中栄一

〔抄 録〕

前同控訴趣意書における論旨第八点について。

所論には、相被告人崔国煥から提出する控訴趣意は、被告人里中の利益に援用するというけれども、記録によつても明らかなように、これ、未だ提出されない他人の控訴趣意(被告人里中栄一の本件控訴趣意書は、昭和二十八年二月十九日、相被告人崔国煥の弁護人布施辰治作成名義の控訴趣意書は、同月二十日各提出)を引用するものであつて、事の性質上、被告人里中の所論に代ゆるに由のない内容不明の控訴趣意を引用するものというべきをもつて、これが控訴趣意は、到底適法な控訴申立の理由というを得ないばかりでなく(昭和二十六年(れ)第一五九号同年四月二十六日最高裁判所第一小法廷判決―最高裁判所判例集第五号九三九頁―参照)、相被告人崔国煥は、弁護人布施辰治作成名義の控訴趣意書を提出した後、被告人里中栄一のため控訴趣意書に基ずく弁論の為された公判前すでに、控訴の取下を為したものであつて、これが控訴趣意は、右控訴の取下と同時に、名実共にその効力を失し、仮に、本所論引用の控訴趣意が、右布施辰治作成名義の控訴趣意書の記載事項を指摘する趣旨であつて、本所論が、控訴申立の理由として適法であるとするも、これが引用の効力もまた、右控訴の取下と共に消滅に帰したものと解するを相当とするから、(昭和七年(れ)第一、〇一九号、同年十月二十六日第三刑事部判決―大審院刑事判例集第十一巻一、四九四頁―参照)本論旨については特に判断を施すべきかぎりでない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!