東京高等裁判所 昭和27年(う)795号 判決
被告人に対する起訴状によれば本件は検察官より公訴の提起と同時に省略式命令の請求がなされたことが明らかであり又被告人作成名義の正式裁判請求書が記録に編綴してあるから原審は本件について省略式命令をすることを相当と認め省略式命命をなしたものと推認しえられる。然るに記録を精査するも右省略式命令書及びこれを被告人に送達したことを証明する送達報告書が記録中に存在しないことは所論の通りであるが被告人作成の右正式裁判請求書には、「昭和二十六年十一月八日省略式命令により罰金壱万六千円に処せられ該命令は昭和二十六年十一月十三日送達を受けたるも不服に付正式裁判の請求をいたします」と記載してあり且上田簡易裁判所の昭和二十六年十一月十五日附受附印が押捺してあるから原審上田簡易裁判所は昭和二十六年十一月八日本件につき被告人を罰金壱万六千円に処する旨の省略式命令をなし、該命令は同月十三日被告人に送達せられたことが推認しえられ、これに対し被告人は同月十五日正式裁判の請求をしたことは前段説明の通りである。然らば右正式裁判の請求は適法であつて刑事訴訟法第四百六十八条第一項所定の棄却の決定をしなければならない場合に該当しないことが明らかである。而して原審は適法に起訴状の謄本を被告人に送達し、通常の手続に従つて公判を開き、審理を遂げ、判決をしたことは訴訟記録によつて明らかであるから省略式命令書が訴訟記録に編綴してないことを以て原審の訴訟手続を違法とすることはできない。
論旨は理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)