大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1033号 判決

控訴人は被控訴人に対し金四十九万五千三百七十円七十銭及びこれに対する昭和二十六年十二月一日から右完済にいたるまで年六分の割合による金額を支払え。

被控訴人のその余の請求は棄却する。

訴訟費用は第一、二審ともこれを両分し、その一を控訴人、その一を被控訴人の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

二、事  実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、認否は、当審において、控訴代理人が、「仮りに控訴人が昭和二十六年十一月十五日被控訴人の前主伊東林産工業株式会社社長伊東晤郎に対し相殺の意思表示をなした事実が認められないとしても、控訴会社は、第一審以来主張のとおり、同会社に対し被控訴人の本件手形譲受前既に弁済期の到来した金五十万四千六百二十九円三十銭の反対債権を有していたのであるから、ここに改めて右債権と本件手形債権とを対等額において相殺する(昭和二十八年四月二十三日午前十時の本件口頭弁論期日において)。」と述べた外、いずれも原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

<立証省略>

三、理  由

控訴会社が訴外伊東林産工業株式会社にあて被控訴人の主張するような約束手形一通を振り出したことは、当事者間に争のないところであつて、当審における証人伊東晤郎の証言によつて真正に成立したことを認められる甲第一号証の一の裏面及び成立に争のない同号証の二、同第二号証の一、二によれば、右手形の受取人伊東林産工業株式会社は、株式会社三和銀行を経て株式会社静岡銀行にそれぞれ取立委任裏書をなして本件手形の取立方を委任し、同銀行は、満期日たる昭和二十六年九月十七日支払場所において支払を求めるため本件手形を呈示したが支払を拒絶せられたこと、並びに受取人会社は、その後同年十一月二十八日本件手形を被控訴会社に裏書譲渡し、被控訴会社は、現にこれが所持人であることを認めることができる。従つて、被控訴人は期限後の裏書によつて本件手形を取得した以上、控訴人は裏書人である伊東林産工業株式会社に対抗することのできるすべての抗弁を被裏書人である被控訴会社に対抗することができるものといわねばならない。よつて、控訴人の抗弁について検討するに、控訴会社の商業帖簿であることに争がなく、かつ、その内容が真正であることが当審証人和田稔の証言によつて認められる乙第二号証の一、二、同第三、四号証の各一ないし三、原審証人高須寿、和田薫、原審及び当審証人和田稔、坂上彊の各証言並びに当審における控訴会社代表者坂上繁の尋問の結果を綜合すれば、伊東林産工業株式会社は、かねてから控訴会社との間に約束手形を交換してそれぞれ取引銀行において割引をうけ資金の融通を計つていたものであること、本件手形は右融通のための手形の一通であつて、控訴会社としては当然満期日において右手形を落さなければならないものであるに拘わらず、これを不渡にしたこと、しかるに、他方、控訴会社は、伊東林産工業株式会社との間に昭和二十五年八月頃から木材の売買取引を継続し、控訴会社は、右訴外会社に対し、昭和二十六年二月上旬長和丸積ラワン材二百九本を代金五百四十五万五千六百七十三円八十銭で売り渡し、内金五百万円の支払を受けたが、残金の支払はなく、その他従前の取引の残代金等を加算して本件手形の満期日である昭和二十六年九月十七日当時において金五十万四千六百二十九円三十銭の弁済期のすでに到来した債権を有していたこと、同年十月十七日頃、控訴会社の常務取締役坂上彊は、右訴外会社の社長伊東晤郎に対し、本件手形債権と右債権とを対等額において相殺する旨の意思表示をして、本件手形の残債務の弁済のために当時東京合板商会から受領した同商会振り出しにかかる金額五十万円の約束手形を提供したけれども同訴外人からその受領を拒絶されたことを認めることができる。原審及び当審証人伊東晤郎の証言中叙上の認定に反する部分は前示各証拠に照し措信することができない。その他叙上の認定を覆えすに足りる証拠はない。果して然らば、本件手形債権は、右相殺された金額の限度において消滅し、控訴会社は、伊東林産工業株式会社従つて被控訴会社に対し金四十九万五千三百七十円七十銭の支払義務を負うに過ぎないものというべく、被控訴人の本訴請求は、その余の争点につき判断するまでもなく、右金額及びこれに対する本件手形の呈示の日の後である昭和二十六年十二月一日から右完済に至るまで年六分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において正当として認容すべきも、その余は失当として棄却すべきである。然るに原判決がこれを全部正当として認容したのは不当であるからこれを変更すべきものとし、よつて、民事訴訟法第三百八十六条、第九十六条、第八十九条、第九十二条、第百九十六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 大江保直 岡咲恕一 猪俣幸一)

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