東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1072号 判決
被控訴人は、本件約束手形は被控訴人が控訴人から金二百五十万円を借り受けるにあたり振り出したものであるところ、控訴人から現実に受領した金額は百八十七万五千円であつたから、被控訴人は右金額及びこれに対する利息制限法所定の年一割の利息以上に支払う義務はないと抗争するので按ずるに、原審証人藤井武清(第一、二回)当審証人谷川宗之の各証言の一部、原審及び当審における控訴人(原告)本人尋問の結果を綜合すれば、控訴人は、訴外藤井武清の仲介で被控訴人から二百五十万円の金融を申し込まれ、貸付期間二箇月、利率月一割、期間中の利息前払の約定でこれを承諾し、被控訴人も右約定を承知の上、控訴人は、被控訴人に対し、昭和二十五年四月二十二日貸付金二百五十万円から右二月分の前払利息五十万円を差し引いた残額二百万円を交付し、被控訴人から右貸金の弁済の方法として本件手形を受領したこと(中略)を認定することができる(中略)。そして右月一割の利率は固より利息制限法所定の利率を超過するものであるけれども、被控訴人は前示のように右利率並びにこれによる利息の前払を承諾していたものであり、又前示証人藤井武清谷川宗之の証言によれば、これは被控訴人が控訴人から金融をうるについては止むを得なかつたところと認められるので、右前払利息差引の事実を目して控訴人が一方的に利息を天引した場合と同一視することができず、むしろ被控訴人が任意右利率による前払利息を支払つたものでただ当事者間にその授受を省略し控訴人が貸付金から右利息金を差し引いて被控訴人に交付したものと認めるのが相当である。されば被控訴人は控訴人から二百五十万円の金員の交付を受けたと同様の経済上の利益を得ているのであるから、消費貸借は全額について成立しているものというべく、従つて被控訴人は本件手形金全額の支払の義務あることは当然であつて、右原因関係に基く被控訴人の右抗弁は理由がない。