大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1172号 判決

成立に争のない乙第一八及び第一九号証、原審における控訴本人の供述によりその成立を認める乙第一、第二号証及び第三号証の三、原審証人小堀武の証言によりその成立を認める乙第四号証、原審証人小堀武及び同戸張そめの証言並びに原審及び当審における控訴本人の供述によると、本件宅地一二九坪三合八勺のうち七三坪三合五才は小森春吉が、九坪は浦田吉之助が、残り四七坪七勺五才は馬飼野某が、いずれも当時の地主である東京三興株式会社から賃借し、その地上に建物を所有したが、これらの建物が昭和二〇年戦災により焼失したため空地となつていたところ、控訴人は昭和二二年六月一五日小森春吉から同年七月二八日浦田吉之助からそれぞれ同人等の賃借権を買い受け、罹災後馬飼野某から同人の右賃借権を譲り受けた戸張周五郎から同年八月一〇日交換によりその賃借権を取得し、これらの譲渡につき同年九月七日右地主の承諾を得た上、本件建物を建築するにいたつたことが認められる。

そこで、控訴人は控訴人が譲り受けた本件宅地の賃借権は臨時処理法第一〇条の適用を受け、右賃借権及び地上建物について登記がなくとも(これらの登記のないことは控訴人の自ら認めるところである。)、控訴人は右賃借権を以て本件宅地の所有権を取得した被控訴人に対抗することができると主張するのである。しかしながら、臨時処理法第一〇条により、対抗要件をそなえなくとも第三者に借地権を対抗することができる者は、「罹災建物が滅失し又は疎開建物が除却された当時から引続きその建物の敷地又はその換地に借地権を有する者」に限られ、罹災建物が滅失した当時その敷地に存在していた借地権を売買及び交換等の特定承継によつて取得した者は含まないものと解すべきであるから、罹災当時本住宅地に賃借権を有していた小森春吉等からそれらの賃借権を譲り受けた控訴人はもはや臨時処理法第一〇条の保護を受けられないものといわなければならない。けだし、罹災都市の急速な復興を図るためには、罹災地に借地権を有する者の保護を厚くして建物の再建を助長する必要があるから、罹災当時から引続き罹災地に借地権を有する者のみならず、かかる借地権を譲り受けた者も、対抗要件をそなえなくとも第三者にその借地権を対抗することができるものと主張する控訴人の見解は、立法論としてはたしかに考慮に値するものであろう。しかし、臨時処理法によつて廃止された戦時罹災土地物件令第六条が、対抗要件をそなえなくとも第三者に対抗することができる借地権者を、「罹災土地ニ付存スル借地権」を有する者としていたのに、右法案と同一趣旨の規定と認められる臨時処理法第一〇条が、かかる借地権者を罹災当時から引続き罹災地に借地権を有する者としたのは、保護すべき借地権者の範囲を限定することにより、借地権者の保護と不動産取引の安全との調和を図つた結果に外ならないと考えられるから、臨時処理法第一〇条の解釈としては、同法条の保護を受けられる借地権者のうちには、罹災当時罹災地に存在していた借地権を売買及び交換等特定承継によつて、取得した者は含まれないものと解すべきである。従つて控訴人の右主張は理由がない。

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