東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1500号 判決
被控訴人は東京都目黒区三谷町五三番地家屋番号同町二九四番ノ二、木造亜鉛葺二階建居宅一棟建坪七坪二合五勺外二階六坪五合は被控訴人の所有であると主張するところ、成立に争のない甲第一号証の記載、原審における証人北川登、同田辺芳造の各証言、被控訴人代表者中川種治尋問の結果を綜合すれば右家屋ははじめ訴外北川登の所有であつたが昭和二十四年十月二十六日訴外田辺芳造においてこれを同人から譲受けて所有権を取得し、次で昭和二十五年十二月二十二日被控訴人においてこれを右田辺から買受け、右北川、田辺及び被控訴人の三者合意の上中間の登記を省略し、同日北川から被控訴人へ直接に所有権移転登記をしたものであることを認めることができる。被控訴人はその所有権取得の原因として直接北川から買受けたことを主張するが、事実は右認定のとおりであつて、これによれば特段の事情のない限り、被控訴人は右田辺から本件家屋の所有権を取得したものと認めるべきであり、従つて被控訴人が現にその所有者であることはこれを認めなければならない。
控訴人は右北川は訴外田辺に本件家屋を譲渡したから北川と被控訴人との間の売買によつては被控訴人は所有権を取得し得ない。また北川と被控訴人間の売買契約は通謀虚偽表示であるから無効であると主張するけれども被控訴人の所有権取得の経緯は右のとおりであるから、北川と被控訴人との間の売買を前提とする控訴人の右主張は失当である。
次に控訴人は訴外田辺芳造は被控訴人に本件家屋を譲渡する前昭和二十五年八月二十九日控訴人にこれを贈与したものであるから、右田辺はこれによつて所有権を失い被控訴人に所有権を移転することができないと主張するところ、成立に争のない乙第一号証の記載、同号証が控訴人の手中にある事実、原審における証人宮沢昭三の証言及び控訴人本人尋問の結果をあわせ考えると、右田辺は本件家屋を昭和二十五年八月二十九日控訴人に贈与したことを認めるに足り、右認定に反する原審証人田辺芳造の証言は信用できない。従つて右田辺は本件家屋を控訴人に贈与した後さらにこれを被控訴人に譲渡したわけであるが、右田辺から控訴人に対する所有権移転については登記のないこと控訴人の自認するところであつて、控訴人はその所有権取得をもつて第三者たる被控訴人に対抗し得ない筋合であるから、結局田辺が控訴人に本件家屋を贈与したとの一事によつて、田辺が被控訴人に所有権を移転し得ないものとはいい得ないところである。すなわち本件は不動産物権の変動とその対抗要件に関する法理の説明に際してしばしば例示されるところの、いわゆる二重売買の場合と同様であつて、先に登記を経たものがその権利取得を主張し得ることとなるに過ぎない。右田辺は本件家屋につき登記簿上所有名義人でなく、被控訴人の登記はいわゆる中間省略の登記であること前示のとおりであるが、このことは前示結論を左右するものではない。