東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1832号 判決
被控訴人の本件土地に対する賃借権は、その主張のように実測合計九十五坪全部に及んでいるが、期間は昭和四年四月末日から二十年であるところ、罹災都市借地借家臨時処理法第一一条によつて昭和三十一年九月十四日迄となつたのである。控訴人等は、右被控訴人の賃借権は、被控訴人が本件宅地上に建設した建物について登記がないから、控訴人には対抗できないと主張し、被控訴人の上記新築バラツクに保存登記がなされなかつたことについては、被控訴人において明に争わないところである。しかしながら、罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条によれば罹災建物が焼失した場合に、その当時から引続きその敷地に借地権を有する者はその借地権の登記及びその土地にある建物の登記がなくてもその借地権は昭和二十一年七月一日から五年以内にその土地について権利を取得した者に対し、その借地権を以て対抗し得ると明定しており、控訴人は土記認定のように右五年内である昭和二十四年十二月に本件土地を取得したものであるから、被控訴人の本件土地に対する借地権は、当然控訴人に対し対抗し得るものである。もしその場合に、借地人が一たんその焼跡に建物を建築した場合には、保存登記をしない限り第三者に対抗できないとすれば、罹災建物の所有者の借地権を保護しようとする同法律の精神が沒却されるおそれがあるし、右のように解して借地権者を保護しても、その期間は五年と制限されているのであるから、その期間内に限つて建物保護法の適用が排除されると解しても、不当に第三者の権利を侵害することにならないから、この点に関する控訴人等の主張は理由がない。
本件土地を東京都が占領軍のために接收したのは、昭和二十年勅令第六三六号土地工作物使用令によつたものではなく、関係人の承諾によつてなされたもので、本件宅地の所有者である渡辺利二郎や控訴人とは東京都又は特別調達庁との間に借土契約を締結しているが、控訴人に対しては本件土地上の建物を收去させるについては補償料を支払つたが、借地権そのものに対してはなんらの補償をも支払つてないことを認めることができる。そうだとすれば占領軍の本件宅地に対する使用権は原始的のものではなく、又被控訴人の本件宅地に対する賃借権は、本件宅地の接收によつて消滅することなく、ただたんに事実上行使し得ない状態におかれていると解するを相当とするから、この点に関する控訴人等の主張も理由がない。