東京高等裁判所 昭和27年(ネ)678号 判決
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(事實並に判斷)被控訴人(假處分債権者)と控訴人(假處分債務者)間の前橋地方裁判所高崎支部昭和二十六年(ヨ)第四号立入禁止並に動産仮処分事件につき同裁判所は仮処分決定をしたが、その決定は被控訴人所有の係争建物及び動産に関するもので、右物件を施設とするダンス教授所の営業につき被控訴人を営主として、仮の地位を定めるためのものであつた。右仮処分決定に対し控訴人は、右仮処分の被保全権利は財産上の権利で金銭的補償によつてその満足を受け得べきものであるから、民事訴訟法第七百五十九条に所謂特別の事情があるものとして取消の申立をした。原審は控訴人の右取消申立を却下した。
控訴審においても控訴人敗訴。金銭的補償の可能なときは、すべて前記法条に所謂特別の事情ある場合に該当するか否かの点につき控訴審判決は次の通り説明している。
本件仮処分の被保全権利が財産上の権利であることは洵に控訴人の所論の通りであるが、本件仮処分命令は争ある特定の場所(本件建物並に動産を施設とする)における継続する特定の営業(ダンス教授所)につき著しい損害を避けるためなされたものであることは明白である。即ちこのような特定の場所における特定のダンス教授所のような継続する営業について控訴人の管理に委ねんか、後日被控訴人が本案訴訟において勝訴の判決を受け、これが確定したとしても、このような営業は営業主の信用、営業方法の如何、顧客の如何によりその消長、盛は著るしく影響を受けるものであり、これが原状への回復は至難であることはいうまでもない。尤も民法においては財産上の権利の侵害による損害に対しては金銭によつて賠償すべきことを命じているが、これは既に生じた損害に対しては右以外に方法がないからであつて、金銭賠償が許されるからといつて、すべて財産上の権利が仮処分の被保全権利であるときは民事訴訟法第七百五十九条に所謂特別の事情があるということは該らない。
おもうに、仮処分の被保全権利が財産上の権利であり、これが金銭的補償により完全若くはこれに近い程度に満足し得るような状況にある場合、即ち仮差押における被保全権利に準じて考え得られる如き状況にある場合には、民事訴訟法第七百五十九条に所謂特別の事情があるものといい得るが、単に仮処分の被保全権利が財産上の権利であり、これが侵害による損害に対しては抽象的に金銭的補償が可能であるの一事丈によつては、右に所謂特別事情があるものと速断することは許されない。
前段説示により明かな如く、本件仮処分は著るしい損害を避けるため争ある権利関係の維持を目的としたものであり、仮差押における被保全権利に準じて考えられるように、単に予め金銭的補償丈によつて完全若くはこれに近い程度に満足し得るような状況にあるものとは考えられない。且又本件仮処分命令の取消により被控訴人が若し本案判決勝訴の場合蒙ることあるべき損害は、これが発生した後は、その算定は可能であるが、現在これが損害は予め算定することは不能で、具体的に金銭に見積つてこれに対する補償の金額を算定できないこと多言を要しない。よつて本件仮処分命令にはこれを取消すべき特別の事情があるものとは考えられない。