大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)785号 判決

よつて、控訴人等の抗弁について判断するに、控訴人須藤が被控訴人から本件家屋を賃借する以前、訴外中村重治から東京都台東区竹町十二番地の二十四所在木造瓦葺二階建店舗三戸建一棟の内向つて右端の一戸を賃借していた事実、被控訴人が控訴人須藤から右家屋の賃借権を譲受け、その交換として、被控訴人が控訴人須藤に対し本件家屋を賃貸した事実は当事者間に争がなく、控訴人等は右賃借権譲渡の対価は金十六万円に定められたと主張するが、当審証人林邦彦、当審に於ける控訴本人の各供述中この点に関して控訴人等の右主張に副う部分は次の認定に照して採用しない。

即ち、金六万円の授受の趣旨については争があるが、(控訴人等の主張によれば、譲渡代金十六万円の内金として、被控訴人の主張によれば、譲渡代金の全額として、)被控訴人が控訴人須藤に対して金六万円を支払つた事実は当事者間に争がなく、当審証人阿部藤忠、当審に於ける被控訴本人須藤の各供述により、右六万円の受領証であることが認められる成立に争のない甲第二号証(右阿部証人、控訴本人須藤の各供述を綜合すれば、金六万円は昭和二十五年三月中支払われたもので、同号証は後日、その日附の日に、作成されたことが認められる)には、何等譲渡代金の内とも表示されず、単に金六万円を譲渡代金と表示してある点、控訴人須藤は本件家屋を被控訴人から賃借する以前、被控訴人から前述のとおり金六万円を受領したが、若し控訴人等の主張するとおり譲渡代金が金十六万円に協定されていたとすれば、尚被控訴人に対して金十万円の債権を有していた筋合となるところ、当審に於ける控訴本人須藤の供述によれば、同人は被控訴人に対し本件家屋賃借後昭和二十六年四月分迄の賃料を支払つて来た事実が認められる。およそ、金十万円もの多額の債権を有する者が、相手方が債務を履行しないのに拘らず、自己丈一方的に進んで一年以上の長きに亘り賃料債務の履行を続けるが如きは怪訝の念を起させる点に、当審証人阿部藤忠の供述を加えて判断すれば、右譲渡代金は当事者間に金六万円と協定され、前段説示のとおり、既に支払を了したものと認めるを相当とする。(中略)従て、控訴人須藤が被控訴人に対してその主張の如く金十万円の譲渡代金債権を有していたことが認められない以上、右債権と賃料債務とを相殺する合意の行われたこともないものと認められるから、控訴人等の抗弁は理由がない。

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