東京高等裁判所 昭和28年(う)1326号 判決
そもそも、判決で公訴を棄却しなければならない場合とされている刑訴法第三三八条第四号の「公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき」というのは、公訴の提起が法定の手続上の要件を具備しないため法律上の効果を発生するに由ない場合を指称するのである。ところで被疑者が勾留された後、直ちに弁護人を依頼する意思を表示したのにかかわらず、未だ弁護人を依頼しない内に、該被疑者に対して公訴を提起したというような場合に、その公訴の提起が法律上無効となると見るべき理拠は、どこにもないし、また、逮捕手続そのものが違法であつて、緊急逮捕手続によるべきところを準現行犯逮捕手続によつたというような場合に、その被逮捕者に対する公訴の提起が法律上無効となると見るべき理拠も、どこにも見出されない。それで(一)および(二)の所論事実を悉く承認するとしても、その事実あるの故をもつて被告人に対する本件公訴の提起が無効であるとするわけにはいかない。従つて、原審が被告人に対し公訴棄却の判決をしなかつたのは、もとより、その所であつて、原審の措置にはいささかも非難すべき廉はない。論旨は理由がない。