東京高等裁判所 昭和28年(う)1460号 判決
所論に鑑み本件記録を精査するに、原判決挙示の各証拠を綜合すれば、原判示第一、第二の事実は優にこれを認めることができる。所論は判示第一の事実につき被告人が小林金次からパチンコ機械の調整パチンコ玉の補充等をする仕事を委任され少くともパチンコ機一台につき五百個迄の範囲であれば自由に処理し得べき関係に置かれていたものであるからパチンコ玉五百個までは現実に支配し得る事実関係があつたものと謂うべくしかも本件はその五百個の範囲内で第三者たる岡田忠次をして不正に領得せしめたものであるから当然横領の罪として処断すべきであると主張するが、原審第一、二回公判廷における被告人の供述、検察官に対する被告人の第三回供述調書によれば、被告人が機械係として雇われていた判示パチンコ遊戲場には同店主の弟である林吉道なる者が監督として開店時間中は表を廻つたり機械の裏を廻つたりして機械の故障や被告人等機械係の行動を付き切りで監視しており、被告人は予定されている五百個の範囲内でもパチンコ玉については全部委せられていたわけでなく、勿論自分勝手に持ち出したり、処分したりすることは固く禁じられていたことが明らかである。要するに被告人は機械係として前記監督の下に機械的補助者として立働いていたにすぎず、本件パチンコ玉は店主又は前記監督がこれを占有支配していたものと謂うべく、従つて被告人の判示第一の所為に対し横領罪をもつて問擬すべきであるという弁護人の主張は採用するに足りない。
(註 本件破棄理由は量刑不当。)