東京高等裁判所 昭和28年(う)1780号 判決
被告人 金山次郎
〔抄 録〕
当裁判所は職権を以て調査するに、原審第一回公判調書には裁判官認印欄に裁判官小林哲郎の認印が押してあるが、右調書の作成者の署名押印及びその所属官公署の表示が全然なく、只右調書の末尾の年月日の記載の次に裁判所書記官補というゴム印を押してあるだけである。尚右調書には別紙として証拠関係目録及び被告人質問調書なるものが添付してあるが、第一回公判調書の第一葉以下被告人質問調書の末葉まで契印が全然なく、文字を加えた部分に認印もないのであるから右公判調書の作成手続は刑事訴訟規則第四十六条、第五十八条及び第五十九条に違反するものといわなければならない。尤も右公判に列席したのは裁判官小林哲郎と裁判所書記官補高橋満であることが窺えるから、右公判調書の作成者は右裁判所書記官補高橋満であり、同書記官補が署名押印を遺脱したものと認められるが、右公判調書は本件被告事件の公判手続中裁判官の被告人に対する人定質問から、被告人の最終陳述までの最も重要なる手続が行われた公判における公判調書であることが窺えるのであるから、かかる公判調書に裁判官の認印があるだけでは有効な公判調書と認めることはできない。従つて原審の訴訟手続は法令に違反したものであり、その違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、各弁護人の論旨に対し判断するまでもなく、原判決は刑事訴訟法第三百九十七条、第三百七十九条により破棄すべきである。