東京高等裁判所 昭和28年(う)202号 判決
被告人 海東征儀
〔抄 録〕
一、第二点について。
原審公判調書の記載に徴すると、公判をした裁判所として「水戸地方裁判所土浦支部」と表示してあるだけで、公判をした場所が公判廷である旨の記載がないことは所論のとおりである。しかし裁判所法第六十九条及び刑事訴訟規則第四十四条第一項第三号によると、法廷は裁判所又は支部で開くことを原則とし、右以外の場所で法廷を開いたときは、その場所を公判調書に記載することとなつているに拘らず、本件記録を精査しても原審公判が同公判調書記載の土浦支部の法廷以外の法廷又はその他の場所で開かれたと認むべき形跡が全くないから右公判は原則どおり公判調書記載の土浦支部の法廷に於て開かれたものと認めるのを相当とする。従つて原審の審理を目して刑事訴訟法第二百八十二条第一項に違反するとする所論は理由がない。
二、第三点及び第七点について。
所論は原審公判調書に裁判官君和田保蔵(第一、二回調書)、検察官野上大也(第二回調書)とのみ記載され官名の表示がないので、果して右君和田裁判官が判事なりや或は判事の職務を行い得る判事補なりや、右野上検察官が検事なりや副検事なりや何れも資格不明であり、従つて有資格の裁判官並に検察官によつて公判廷が構成されたか否か明らかでなく、違法なる公判廷の構成たるを免れぬ旨主張するものであるから畢竟、刑事訴訟法第三百七十七条第一号の事由あることを主張するものに外ならない。然るに本件控訴趣意書には、この点につき同条所定の保証書の添附がないから不適法として採用し得ないのみならず、裁判官とは、判事、判事補等裁判の職務を行う官吏の総称であり、検察官とは検察庁法第四条所定のいわゆる検察事務を行う検事総長以下同法第三条挙示の官吏の総称であるから、裁判官及び検察官なる名称は何れもこれを官名ということができるので、所論原審各公判調書に裁判官並に検察官の官名の記載を欠如するとの所論は容認できない。而して所論君和田裁判官が昭和二十三年法律第百四十六号判事補の職権の特例等に関する法律第一条の規定により同年十二月二十八日最高裁判所から判事の職務を行わしめる者に指名された判事補であることは当裁判所に顕著な事実であり、又所論野上検察官も公判調書に検察官としてその氏名を記載してある以上、反証なき限り資格ある検察官と認むべきが当然である。従つて所論原審各公判廷は何れも資格ある裁判官並に検察官によつて構成されたものと認め得られるから論旨は凡て理由がない。