東京高等裁判所 昭和28年(う)2335号 判決
被告人 竹下隆一
〔抄 録〕
弁護人Aの論旨第四点及び弁護人Bの控訴趣意第三点について。
よつて按ずるに、原判決は被告人が三回に合計十三万円の供与を受けた事実と九回に合計二万四千五百円の供与をなした事実とを認定した上、右供与を受けた金員中から供与をなした金員を控除した残額十万五千五百円を没収することができないものと認め、被告人からその価額を追徴しているのであるけれども、被告人が供与を受けた十三万円中には被告人が議員候補者原茂のため選挙運動をなす費用をも包含していたものであるから、被告人がその趣旨に從つてその金員から選挙運動の費用を支出したときは、該金員は被告人において最早やその収受した利益を保持しているものということができず、從つてかような場合にはその価額を被告人から更に追徴することはできないものと解すべきである。今検察官に対する被告人の供述調書及び当審における事実取調の結果を綜合すると被告人は前記供与をなした二万四千五百円の外、右金員中から選挙運動の費用として書記局賃貸料、電話料、謄写版及び原紙代、おうだん幕修理代、郵便はがき及び印刷代、はがき印刷代及び名刺代計三万三千二百九十五円を支払い、且つ被告人竹下の下で選挙に関する諸務に従事していた支部書記局員宮島繁に選挙に関する適法な費用に支出したことが認められる雑費二万円を交付した事実が認められる。それ故被告人からは以上合計七万七千七百九十五円を控除した残額五万二千二百五円を没収することができないものとして追徴すべきもので、十万五千五百円を追徴すべきものではないから、原判決がこれを追徴したのは結局失当であるといわなければならない。論旨はこの限度においていずれも理由があり、原判決はこの点において破棄を免れない。