大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)2386号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔争点〕本件判旨は検察官の控訴に係る事件で検察官が提出した控訴趣意書について、被告人の弁護人から、その記載事項等に関して異議を述べた点に関する判断である。

〔判旨〕一、本件控訴趣意書が刑訴法第三八条所定の「訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実であつて刑の量定が不当であることを信ずるに足りるものを援用し」ていないから不適法として撤回せられ度き旨主張するも、右趣意書第九点に記載せらるる被告人の前科の事実は本件記録上極めて明白であつて、これを訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われていない事実であつて、右法条に違反するものとすることはできない。

二、刑訴法第二五条第六項は起訴状に関する制限の規定であつて、控訴審の審判に準用せらるべきものではないから、仮に右趣意書に記録及び証拠に基かない事実を記載したとしても、かかる主張は控訴の理由なきものとして排斥せらるるは格別、これを以て憲法第一三条第三七条に違反するものとなす能はざるは勿論、かかる主張に対し撤回を命ずべき法律上の根拠がない。

〔説明〕刑事訴訟法第三七八条第三七九条第三八一条第三八二条等はそれぞれの控訴理由が存することを信ずるに足りるものを援用しなければならないと規定している。そこで右にいう「援用」にはどの程度どんな方法でしなければならないかが問題となつている。これを最もきびしく解せば趣意書自体にそれぞれの控訴理由の存することを判明できる程度に記録や原審で取り調べた証拠に現われている事実を具体的に逐一記載し且つこれに対しこれを認めることのできる証拠の所在を明確に記載しなければならないことにもなろう。然しながら現在の実務においてそれ程厳重に取り扱つてはいない。唯単に抽象的に控訴理由を例えば原判決の認定は誤つているとするが如きは不適法たるを免れないだろうが、ある程度具体性を持つて示されていればそれで差し支えないものと解している。本件の如き場合も勿論許容すべきものである。次に後段について刑訴法第四〇四条によつて控訴審に準用される第一審の公判の規定は控訴審か事後審を原則としている性格上の相違から自ら制限を受けることは勿論であつて起訴状と控訴趣意書とは性質的に異なつているから控訴趣意書に予断妨止に関する刑訴法第二五六条第六項を準用することは到底許されないこと正に本判決のとくとおりであり、又憲法違反を主張する点も余りにも飛躍した論理である。

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