東京高等裁判所 昭和28年(う)2532号 判決
被告人 斎藤保 外一名
〔抄 録〕
弁護人の被告人ら両名に対する各控訴趣意各第二点について。
日本国憲法第二十一条が保障している集会、結社及び言論出版その他一切の表現の自由といえども、これを濫用することは許されず、常にこれを公共の福祉のために利用しなければならないものであり、従つて公共の福祉のために必要且やむを得ない限度においては、これを制限することが許されるものといわなければならない。ところで、本件において警察署長が解散命令を発する根拠となつた昭和二十四年三月二十五日新潟県条令「行列行進、集団示威運動に関する条令」は行列行進又は公衆の集団示威運動(徒歩又は車輛で道路、公園その他公衆の自由に交通することができる場所を行進し又は占拠しようとするもの。)はその地域を管轄する公安委員会の許可を受けないで行つてはならないものとしているが(第一条第一項)、このような行列行進又は公衆の集団示威運動は、その性質上、往往にして不測の事態を引き起しやすく、ややもすれば自由の濫用に陥り、延いては公共の福祉を侵害する虞があるところから、あらかじめ公安委員会の許可を要するものとしたものであり、従つて学生、生徒、児童のみが参加し、且つ教科課程に定められた教育のため学校の責任者の指導によつて行う行列行進については許可を要しないものとしており(同条第二項)、なお公安委員会は、行列行進又は公衆の集団示威運動の許可申請に対しては、その行進又は示威運動が公安を害する虞がないと認められる場合には、開始日時の二十四時間前までに許可を与えなければならないばかりでなく(第四条第一項)許可を与えなかつたときは、すみやかにその理由を詳細に、公安委員会の所属する自治体の議会に報告しなければならないとせられており(同条第三項)、且つ公安委員会が許可申請を受けながら、開始日時の二十四時間前までに許可を与えない旨の意思表示をしないときは、許可があつたものとして行動することができるものとせられている(同第四項)ことに徴すれば、右条令による制限は、むしろ公共の福祉のために必要且つやむを得ない最少限度のものということができこそすれ、決して日本国憲法第二十一条が保障している集会、結社その他の表現の自由に対する不当の制限であるとは認められず、従つて右条令が憲法の条規に違反した違法のものとすることは当らないから、論旨は理由がない。