大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)2544号 判決

被告人 関根宏

〔抄 録〕

各控訴趣旨書の中で、ジヨン・エフ・ホガツト方における被告人による準強盗の事実を否認し種々事由を挙げて、原審が敢てこれが準強盗の事実を認定判示したことを非難し原判決には理由不備乃至擬律錯誤の違法があると主張しているので、考察するのに、原判決が証拠としている被告人の司法警察員や検察官に対する各供述調書が、取調官の強制、拷問、脅迫等その供述の任意性を疑わしむべき事由によつて作成された事跡は、記録上これを認め得るに由はないが、その挙示する証拠によれば、被告人は、窃盗の目的で、原判示日時頃ジヨン・エフ・ホガツト方屋内に侵入し、同家応接間で目覚時計壱個、離れの部屋で現金七百円をそれぞれ窃取した後、同家女中部屋に到りたるところ、同所に就寝中の女中浜森貴栄に発見されて、同女に対し「強盗だ」「金を出せ」等と申し向け脅迫し、剩さえ同家ありあわせのネクタイ二本で同女の手足を縛るの暴行に出でたが、同女に「主人夫婦が向うで裸で寝ている」と言われたことが動機となつて何物も強取するところなく、ただ、先に窃取した物品を所持して逃亡した事実が窺い得られ、その態様において、被告人は窃盗の後家人に発見されるや強盗の意思をもつて金品を強取しようとしたが、その目的を遂ぐるに至らなかつた強盗未遂の場合に該当するものがあり、原審が被告人の所為につき、窃盗をした後逮捕を免かれるため暴行、脅迫の所為に出でたものとして、刑法第二百三十八条所定の準強盗の罪に問うたことは、原判決に影響を及ぼすべき事実誤認の過誤を冐し、延いては法律の適用を誤まるの違法があるものと言い得る外、原審が、その判決に示しているように、女中浜森貴栄に対し「強盗だ」「金を出せ」等と申し向けて脅迫し、更にネクタイ二本をもつて同人の手足を縛つて暴行を加えた事実を認めながら、敢て準強盗の罪に問うた点において、また、判決の理由にくいちがいあるの違法もあつて、原判決は、到底その破棄を免かれない。論旨は窮極において理由がある。

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