東京高等裁判所 昭和28年(う)2634号 判決
被告人 小倉昭一
〔抄 録〕
論旨第二点について。
刑法第二百三十五条の窃盗罪は他人の財物を窃取することをその構成要件とするのであるから、右の罪の罪となるべき事実を判示するに当つてはその窃取にかかる財物が他人の所有に属することを示さねばならないこと、及び原判決がその判示第二の(1)において「佐藤真吉の管理に係る銘仙掛ふとん一枚外七十一点」と記載しただけでそのなにびとの所有物であるかを明らかにしなかつたことは所論のとおりである。しかしながら、原判文全体を通読すれば、右の財物が被告人以外の者の所有物であることはおのずから示されていると解されるのであつて、いやしくもその財物が他人のものであることが判示されていればその所有者の氏名を一々判示しなくとも、犯罪構成要件に該当する事実の判示としてはあえて欠くるところはないというべきであるし、また原判決は被告人の犯行の日時・場所・窃取にかかる物品・その管理者等をいずれも具体的に判示しているのであるから、たとえ所有者の表示がないからといつて事実の特定が不十分であるということもできない。原判決が他の事実に関してはいずれも財物の所有者を具体的に判示しながらこの事実についてだけその判示を省略したのはやや不体裁たるを免れないけれども、それだからといつて理由不備というほどのものでないことは右に説明したとおりである。論旨は理由がない。