大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)2704号 判決

被告人 上田要二郎

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意について。

起訴前における被疑者に対する勾留状の効力は、その勾留請求の日を含め原則として十日、やむを得ない事由があつて裁判官による右期間の延長があつても、右十日を含めて二十日を超えることのできないことは、刑事訴訟法第二百八条所定の趣旨に照らし明らかである。而して既存の勾留は、鑑定留置状の執行により当該刑務所から出所せしめられたかぎりにおいて当然その執行を停止されるものと解すべきところ、本件記録によれば、被告人は、昭和二十八年三月二十九日為された勾留の請求によりその翌日勾留状の執行を受け、その勾留は、前示刑事訴訟法第二百八条第二項の規定により、同年四月十七日まで延長され、本来ならば、その間被告人に対し公訴の提起なきかぎり右延長期間満了と同時に勾留状は失効し、被告人は直ちに釈放されなければならないわけであるが、被告人は、その間昭和二十八年四月八日発布された同日以降同年五月十八日まで新潟大学医学部精神科病室に留置する旨の鑑定留置状により同年午後四時三十分以降同病室に留置されて、翌五月十三日まで鑑定人上村忠雄による精神状態の鑑定検査を受け、勾留状(記録二三二丁)及び鑑定留置状(記録二三五丁)の左側上部欄外の認印ある記載によつて明らかなように、同月十五日勾留の場所である新潟刑務所に収容されたことが明瞭であつて、右四月八日と五月十五日に孰れも勾留執行の一日と解すべきを相当とするから、前示請求にかかる勾留は同年四月八日以降当然停止されたこととなり、その有効な勾留の残余期間は、なお、九日を存し、現実に右鑑定留置の満了したと認むべき五月十四日の翌十五日から九日間すなわち五月二十三日まで起訴前の勾留として有効にこれを執行し得る筋合である。されば、起訴状によれば本件公訴の提起は、昭和二十八年五月二十三日に行われたことが洵に明白であるから、前示勾留状は、これが公訴の提起により爾後なおその効力の存続すべきことは多言を要しないところであつて、原審が、これが勾留を右公訴の提起後もなお連続して公判手続を進行したからといつて何等非議さるべきものはないのであるから、本件勾留の延長期間満了の日たる昭和二十八年四月十七日まで公訴の提起がなく、従つて、該勾留状はその効力を失いたるに拘わらず爾来その効力あるものとして勾留を継続して公判手続を進行したことをもつて憲法第三十一条、第三十四条に違背するものであると主張し、原判決の破棄を求むる所論は当らない。論旨は理由がない。

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