東京高等裁判所 昭和28年(う)2942号 判決
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〔判旨〕日本国憲法第二一条が保障している集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由といえども、これを濫用することは許されず、常にこれを公共の福祉のために必要且つやむを得ない限度においては、これを制限することが許されるものといわなければならない。ところで本件において警察署長が解散命令を発する根拠となつた新潟県「行列行進、集団示威運動に関する条例」は行列行進又は公衆の集団示威運動(徒歩又は車輛で道路、公園その他公衆の自由に交通することができる場所を行進し又は占拠しようとするもの)はその地域を管轄する公安委員会の許可を受けないで行つてはならない」としているが、このような行列行進又は公衆の集団示威運動はその性質上往々にして不測の事態をひき起しやすく、ややもすれば自由の濫用に陥りひいては公共の福祉を侵害する虞があるところから、あらかじめ公安委員会の許可を要するものとしたものであり、従つて学生、生徒、児童のみが参加し、且つ教科課程に定められた教育のため学校の責任者の指導によつて行う行列行進については許可を要しないものとしており、なお公安委員会は行列行進又は公衆の集団示威運動の許可申請に対してはその行進又は示威運動が公安を害する虞がないと認められる場合にはその開始日時の二十四時間前までに許可を与えなければならないばかりでなく(第四條第一項)許可を与えなかつたときは、すみやかにその理由を詳細に公安委員会の所属する自治体の議会に報告しなければならないとしており(同第三項)且つ公安委員会が許可申請を受けながら開始日時の二十四時間前までに許可を与えない旨の意思表示をしないときは許可があつたものとして行動することができるものとしている(同第四項)ことに徴すれば、右条例による制限は、むしろ公共の福祉のために必要且つやむを得ない最少限度のものということができこそすれ、決して日本国憲法第二十一条が保障している集会、結社その他表現の自由に対する不当の制限であることは認められず、従つて右条例が憲法の条規に違反した違法のものとすることはあたらないから論旨は理由がない。
〔説明〕この種条例の合憲性を肯定した先例は、本件と同様許可主義を採る東京都条例について二七・六・一〇第五刑事部判決(二六(う)第六一四〇号事件)、届出主義を採る埼玉県条例につき二六・一二・六第十二刑事部判決(二六(う)第三九四八号事件)、同樣の千葉縣條例に関する二八・六・一第五刑事部判決(二八(う)第八六四号事件)、等がある。憲法第二十一条の自由の保障の解釈如何では異論も多いことと予想される。許可はいけない届出程度ならいいという形式的な事柄で事を決し得ないこと勿論であろう。許可を採る場合であつても無制限な自由裁量によるのでなく原則として許可しなければならないような建前になつていることが窺われ又届出を採る場合でも単純な届出のみでなく多少集会が禁止される場合が留保されているのであるから、いずれにしても実質的には大差ないであろう。判例の立場は、この種条例における自由の制限を公共の福祉のために必要且つやむを得ざる最少限度のものとして合憲性を是認している点において一致している。