大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)2970号 判決

被告人 高師高一

〔抄 録〕

検察官の論旨第一、二点について。

原判決挙示の鑑定人山本裕徳作成の鑑定報告書、鑑定人伏崎彌三郎作成の鑑定書及び武田均の昭和二十七年十月七日附鑑定書によつて本件火焔瓶が、その原料、構造、装置において、又その性能作用においても原判決認定のとおりと認められる。而して爆発物取締罰則にいわゆる爆発物とは、理化学上のいわゆる爆発現象を惹起するような物質で、爆発作用そのものにより、公共の安全を攪乱し又は人の身体財産を傷害損壊するに足る破壊力を有するものと解するのが相当である。(最高裁判所昭和二十八年(あ)第二八七八号事件判決参照)

然るに本件にあつては、判示火焔瓶の投擲により瓶中の硫酸が流出し瓶の外側の塩素酸加里と化学変化を起して酸化塩素を発生し、これが紙又は糊に触れて爆発的に分解し高熱を発しこれがいわばマッチの作用を為しそのためガソリンが引火して燃焼するに至ること原判示のとおりであり、塩素酸加里と硫酸の化学変化による爆発をマッチの作用に比較しているが、火焔瓶自体をマッチの燃焼と同視したわけでないし、火焔瓶の威力を無視したわけでもない。ただ本件火焔瓶に装置された程度の少量の塩素酸加里を以てしては、局部的小爆発を惹起するだけで、その爆発自体により、公共の安全を攪乱し人の身体財産を傷害損壊する力のないものであることを判示しただけである。而してガソリンの燃焼作用は相当急激な燃焼といい得るが、理化学的には定常燃焼に過ぎないから、非定常燃焼たる爆発現象とは本質的に相違することも原判決説明のとおりである。してみれば本件火焔瓶は塩素酸加里の化学変化による小爆発と、これに接着し殆ど同時にガソリンの燃焼を惹起するよう装置されたものではあるが、未だ爆発物取締罰則にいわゆる爆発物に該当するとは認められず、これと見解を同じうする原判決は正当で、所論のような事実誤認もなければ、法律適用の誤も存しない。それ故所論は理由がない。

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