東京高等裁判所 昭和28年(う)3183号 判決
被告人 岩本好雄
〔抄 録〕
控訴趣意一、について。
原判決の認定した被告人の窃盗既遂の事実は、原判決引用の証拠によりこれを認めるに足り、記録を精査検討しても、原判決の右事実の認定が所論のように誤認であることを窺うことができない。すなわち原判決引用の証拠によると、被告人は原判示日時場所においてパチンコ遊戯場内玉売場にあつた煙草及びタオルを窃取しようとして玉売場の表戸の鍵を外して裏戸を開け、煙草ピース百九十七個、同新生百四十個、同バツト四十個、タオル一本を取り出し、ピース四十七個は自己の洋服のポケツト内に詰め込み、ピース百五十個、光三百個、新生百四十個、バツト四十個は玉売場のカーテンを利用して二個の包みに荷造し、タオル十本も右煙草と共に荷造し、その包みの一個を遊戯場内の自転車の荷台にのせていた際警官に発見されたため、荷造した煙草、タオルの包みをその場に置き、洋服ポケツト内にピース四十七個を詰め込んだ儘同所から逃走した事実を認めることができるのであるから、被告人は自己の洋服ポケツト内に詰め込んだピース四十七個はもとより、同遊戲場内において荷造を了つたその余の煙草及びタオルも亦、これを同所から外部に持ち出さなかつたとしても、自己の事実上の支配内に置いたものといわねばならないのである。従つて被告人は右荷造した煙草及びタオルについても窃盗既遂罪の刑責を負うべきことは当然であるから、原判決には所論のような事実誤認又は法令の適用を誤つた違法はなく論旨は理由がない。