大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)3400号 判決

被告人 田川輝夫

〔抄 録〕

論旨第一点について。

所論にかんがみ訴訟記録を調査するに、原審が原判示第三の(一)の事実を認定する証拠の標目欄に一、大島音之助届出被害届及び被害品種別書と掲記していることは所論のとおりであり、また右被害品種別書には作成者名義もなく唯被害金品の記載があるだけで、作成者の印も、署名もなく、また被害届の第一葉(記録五六丁)と次葉(同五七丁)の被害現場見取図と更にその次葉(同五八丁)の被害品種別書との間に作成者の契印の存しないことも所論のとおりである。しかしながら右記録編綴に係る以上三葉の書面を仔細に検討すると、右三葉の書面は不可分の関係にあり一体を為して、原判決挙示の大島音之助届出被害届書を形成しているものであることが認められる。即ち右第一葉(記録五六丁)表面の届出人欄には届出人(被害者本人)として大島音之助の署名押印があり本来ならば右届出書第一葉裏面の被害状況欄に右届出人大島音之助が被害金品の種類数量等を記入すべきものであるが、本件の場合は被害金品の種類数量が多種多量で右第一葉裏面の該当個所に書き切れない状況にあつた為め右大島が特に「被害品種別」と題して別紙(記録五八丁)に被害金品の種類数量等を記入してこれを前記第二葉の見取図(記録五七丁)と共に前記第一葉に添附したものと認むべく、以上三葉の書面は一体を為し不可分の関係にあるものであると解すべきである。さればこそ所論指摘の右「被害品種別」と題する書面には作成名義も作成者の署名、押印のないことも理の当然であつて、何等怪しむに足りないところである。このことは、当審において証人として取調べた大島音之助の証言に徴すれば更に疑を容れる余地のないところである。唯本件被害届書各葉間に届出人の契印の存しないことはこの種届出書類の形式として聊か不備の点あるを免れないが、かかる書類の形式的不備は固より前記被害届そのものの成立乃至証據価値を抹殺するものではない。而して大島音之助の右被害届の記載内容に徴すれば、右は同人方における窃盗行為を自供した被告人の司法警察員に対する供述調書並に被告人の原審公廷における自供の補強証拠として聊かも欠くるところがなく、右各証拠を彼此綜合考覈すれば原判示第三の(一)の事実を肯認するに充分である。その他記録を精査するも、原判決には何等法令違反の点なく、また判決に影響を及ぼすこと明らかな事実誤認の過誤あるを見ない。論旨は理由がない。

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