東京高等裁判所 昭和28年(う)3964号 判決
被告人 外川増雄
〔抄 録〕
被告人が、木滑喜一郎及び羽賀国作両名と共謀して選挙権者数名に饗応したとの事実は、証拠上これを認め難く、原判示事実は、後記の如き過誤ある点を除き、原判決挙示の証拠によつて優にこれを認めることができ、記録を精査するも、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認はない。ただ然し、原判決の挙示する証拠によれば、原判示金四千円は、被告人が投票取纒めのため選挙権者に対する供応の費用として木滑喜一郎及び羽賀国作の両名に手交したものであることが明らかであつて、その所為は、公職選挙法第二百二十一条第一項第五号にいわゆる交付に該当し、同号所定の罪の成立を免かれないところ、原審が木滑喜一郎及び羽賀国作の両名に対し投票取纏の依頼を為しその費用に充つるため供与したものと認定し、同条同項第一号の罪に問うたことは、事実の誤認乃至は法令の適用を誤まるの過誤を冒したものといわなければならないが、同条同項第一号の供与と第五号の交付とは同一罰条に規定された同種行為で、ただその態様において多少異るものがあるにすぎないのみならず、その法定刑も同一であり、且つその過誤あるの故をもつて量刑上彼此考慮を異にすべきものもないところであるから、これが過誤をもつて、敢て判決に影響を及ぼすことの明らかなものがあるとして、原判決を破棄すべき事由とするに足りない。各所論は何れも採用し難く、論旨はすべてその理由がない。