大判例

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東京高等裁判所 昭和28年(う)3974号 判決

被告人 望月長蔵 外

〔抄 録〕

一、A・B両弁護人の控訴趣意第一点について。

原判決がその理由の冒頭に「同候補者に当選を得しめる目的で」と記載し、右の文言がその第一から第五までの判示事実にすべてかかる形になつていること、しかるに右の判示事実中第二の二の(ハ)及び第五の各事実はいずれも選挙期日後の事実であることはいずれも所論のとおりであり、選挙期日後において当選を目的として行動することのありえないこともまた所論のとおりである。それゆえ、この点に関する原判決の判示はまことに不体裁の観を免れないのであるが、原判決の判文を全体として通読すれば、原裁判所が所論の各事実についてまで当選を得しめる目的があつたと認定する筈のないことは明らかであり、其の文言はその他の選挙期日前の事実の判示にかからしめる趣旨で記載したものと認めるのを相当とするから、前記のようにそれが所論の事実にまでかかるような形で記載されたのは、畢竟一種の誤記であると判断される。としてみれば、この点をとらえて原判決に理由のくいちがいがあるということはできないから、論旨は理由がない。

同第二点について。

本件起訴状に原判決と同じく前段に述べたような冒頭の記載のあることは所論のとおりである。そして、選挙期日後の行為について「当選を得しめる目的」がありえないことはすでに述べたとおりであるし、公職選挙法第二百二十一条第一項第四号の構成要件がかかる目的の存在を必要としないことも所論のとおりであるから、本件の起訴状はその第二の二の(三)及び第五の事実との関係においては本来ありえない当選目的を記載し、その第二の一、第三、第四の一の各事実との関係においては無用のことを記載したことになるわけである。しかしながら、論旨第一点に対する判断の中で述べたと同じ理由によつて、この当選目的の記載はむしろ検察官の一種の誤記と認めるのが相当であるのみならず、かくのごとき余分の記載がなされたからといつてその内容上裁判所に不当な予断を生ぜしめる虞があるものとはいえないから、この瑕疵は起訴状を無効ならしめるものでもなく、また日本国憲法第三十七条第一項に違反するものでもない。論旨は理由がない。

註 原判決の認定した事実は、

被告人等は何れも昭和二十八年七月十日施行された安倍郡選出県会議員補欠選挙に際して立候補した狩野三郎の選挙運動に従事したものであるが、同候補者に当選を得しめる目的で、

第一 被告人望月長蔵は、同年七月七日頃静岡市末広町百二十四番地狩野勇吉方に於て、被告人見城十平に対し右候補者のため投票取纒費用及び運動報酬として、金弍万円を供与し

第二 被告人見城十平は

一、昭和二十八年七月七日頃前記狩野勇吉方に於て、望月長蔵より右第一、記載の趣旨で供与せられるものであることを諒承し乍ら金弍万円の供与を受け

二、(イ) 同年同月八日頃、安倍郡大河内村渡五百五番地被告人内藤角太郎方に於て、同人に対して同人が狩野三郎の為投票取纒の運動をする資金及びその報酬として、金五千円を供与し

(ロ) 右同日頃、同村渡五十七番地被告人南条憲治方に於て、被告人内藤角太郎を介して南条憲治に対し、同人が狩野三郎の為め投票取纒の運動をする資金及びその報酬として、金壱万円を供与し

(ハ) 同年同月十三日頃、同村中字八十番地の被告人見城十平の居宅に於て、見城喜雄に対し、狩野三郎の為め投票取纒等の運動をしたことに対する報酬として、金三千円を供与し

第三 被告人内藤角太郎は同年同月八日頃、前記被告人内藤角太郎の居宅に於て、被告人見城十平より右第二、の二の(イ)記載の趣旨で供与せられるものであることを諒承し乍ら、金五千円の供与を受け

第四 被告人南条憲治は

一、同年同月八日頃、前記被告人南条憲治の居宅に於て、内藤角太郎を介し見城十平より、右第二の二の(ロ)記載の趣旨で供与せられるものであることを知り乍ら、金壱万円の供与を受け

二、同日頃、同村有東木八十五番地宮原留作方に於て、同人に対し狩野三郎の為め投票取纒の運動を依頼し、その資金及び之に対する報酬として、金千五百円を供与し

第五 被告人見城視喜雄は同年同月十三日頃、前記見城十平方に於て、同人より右第二、の二の(ハ)記載の趣旨で供与せられることを知り乍ら、金三千円の供与を受けたものである。

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