東京高等裁判所 昭和28年(う)3981号 判決
被告人 鈴木一夫
〔抄 録〕
(二) 次に原判決摘示の犯罪事実第二(銃砲刀剣類等不法所持)について、被告人は本件ジャックナイフを何等不正に使用する意思なく正当に所持したものであるから、銃砲刀剣類等所持取締令違反の罪が成立しない、仮りにその所持が同罪に該当するとしても、被告人は右ジャックナイフを使用して傷害罪を犯したのであるから、同令違反の罪については処罰の必要がない旨主張しているのでこの点について按ずるに、原審が被告人の本件ジャックナイフの所持を銃砲刀剣類等所持取締令第十五条の規定に違反するものと認め、同令第二十七条を適用して処断したこと及び右ジャックナイフを使用して犯した傷害罪の外に同令違反の罪が別個に成立するものと判示したことは、原判文上明らかである。
しかし、被告人が業務その他正当な理由による場合でないのに本件ジャックナイフを携帯所持していたことは、原判決挙示にかかる証拠により十分にこれを認定することができるし、記録を精査検討し、原審が取り調べたその他の証拠によつても、被告人の右ジャックナイフ所持について所定の除外事由があつたことは到底認められない。しかも銃砲刀剣類等所持取締令第十五条第二十七条は、所定の除外事由なくして銃砲等を所持すること自体を処罰するものであるから、被告人が本件ジヤクナイフを所持していた以上仮りに所論のごとくこれを不正に使用する意思がなく又危険性がないとしても、同令違反の罪の成立を阻却するものではない(昭和二十三年(れ)第八三〇号、同年十二月四日第二小法廷判決参照)。
しこうして銃砲刀劍類等所持取締令に違反して刀劍類を不法に所持する者が、その刀劍類を使用して人の身体を傷害した場合において、右不法所持と傷害とは、構成要件も、被害法益も異なる別個の行為であつて、一個の行為とみることはできないし、前者は後者の要素に属せず、又この両者は必ずしも牽連関係にあるものともいえないから、かかる場合には、刑法第五十四条第一項前段及び後段の適用はなく又吸収犯の観念を容れる余地もなく、該取締令違反の罪と傷害罪との併合罪が成立するものと解すべきである(昭和二十三年(れ)第一、四二九号、同年十二月二十四日第三小法廷判決、同二十四年(れ)第一、二二六号、同年十二月八日第一小法廷判決、同二十四年(れ)第三、〇九六号、同二十五年五月二日第三小法廷判決、同二十五年(れ)第一、五四四号、同二十六年二月二十七日第三小法廷判決各参照)。原判決の擬律は正当である。